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Interview

2020.8.18

民主主義とは何かと問われるとき、メディアである私たちも問われている Choose Life Project代表、佐治洋さんインタビュー

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2020.8.18

Interview #Yasuda

7月5日(日)、コロナ禍の中で行われた東京都知事選。“盛り上がらなかった”とされる選挙戦は、果たして感染対策だけが要因だったのだろうか。例年行われていたテレビ討論会が開かれず、十分な議論が尽くされたとは言い難い中、候補者のウェブ討論会を主催し注目を集めたのが、ネットメディア「Choose Life Project」だ。これまで検察庁法改正案について問題提起をするネット番組を届けてきたほか、表現の自由、投票を呼びかけるインタビューも配信するなど、幅広く社会問題を手がけてきた。今、「メディアがチャレンジすべきこと」は何か、代表を務める佐治洋さんに伺った。
 

(撮影:安田菜津紀)

―「Choose Life Project」は、私もインタビューや生配信でご一緒する機会を頂いてきました。改めて、どんなメディアなのか教えていただけますか?

「Choose Life Project」は、テレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志で始めたプロジェクトです。基本的にはTwitterや、Facebook、YouTubeなど、SNSで動画をネット配信しているメディアです。
 
 
―著名人へのインタビューから、政治ど真ん中の議題に取り組む討論番組まで、手がけていることは多岐に渡りますね。

僕自身は報道番組でずっと仕事をしてきたのですが、そういった場ではニュース報道と文化芸術を切り分けて伝えているところがあります。それをどうにか融合して報じられないだろうか、と考えてきました。あとはやはり誰もが話せる場所、自由な言論空間を作りたくて、このプロジェクトを始めました。

基本的に専従は僕1人。そしてコアメンバーが3、4人います。他にも、10数年間テレビの仕事をするなかでつながってきた現役のテレビディレクターや記者の方が手伝ってくれています。それぞれの方に得意分野があるので、取り組むテーマに沿って、その都度お声がけして相談しながら動画を作っています。
 
 
―具体的にはどんなことを手がけてきたのでしょうか?

検察庁法改正案をめぐる議論の際には、毎日のように生配信を行っていました。それまでは生配信番組よりも、日々のニュースの中でこぼれ落ちている国会のやりとりなどをTwitterの制限尺の2分20秒にまとめて投稿することに力を注いでいました。そして「Choose Life Project」の原点は、投票の呼びかけです。文化人、著名人の方のお力を借りて「選挙に行きましょう!」と呼びかけるキャンペーンを行ってきましたが、最初の動画は是枝裕和監督でした。

他にも、「判決ウォッチング」というタイトルで、ニュースからこぼれ落ちがちな裁判の経過、判決について伝えています。
 
 
―「Choose Life Project」を始めたのは2016年の7月、4年前ですね。

2016年7月は参議院選挙があった月です。前年の2015年9月には、安保法制が成立しています。国会前に多くの人が集まって抗議の声をあげている様子はニュースでも報じされていましたが、例えば「『SEALDs』という大学生を中心とした団体が、ラップ調の新しい形で抗議している」などと矮小化して伝えられていることも少なくありませんでした。なぜ抗議をしていて、何を主張しているのかが抜け落ちた形で切り取られると、ネット上でその部分だけが独り歩きをして拡散されてしまいます。国会前の現場で民主主義とは何かが問われているときに、メディアである私たちも問われている感覚になったんです。それは僕だけではなく、今の「Choose Life Project」のメンバーや、関わっている記者、ディレクターも、民主主義のために何ができるんだろう?ということを探っていたと思います。

例えば、選挙期間に「投票行きましょう」と呼びかけることは、テレビでもやっていいはずなんです。ところが公示日以降、そういうキャンペーンを張るどころか、選挙報道がどんどん少なくなっていく過程を見ていて、もどかしさを感じていました。
 
 

【わたしの一票、誰に入れる?都知事選候補に聞く10の質問 #都知事選候補討論会】

 
 
―TBSにいた頃はどんな番組を作ってらっしゃったんでしょうか?

僕は2007年にTBS関連の制作会社に入社して、ニュース映像の編集を学んだ後、TBSの報道局で社会部記者を経験しました。その後、毎週土曜日夕方に放送している「報道特集」という番組にディレクターとして携わらせて頂いたり、去年6月で終わってしまった、くりぃむしちゅーの上田晋也さん司会の「サタデージャーナル」にもディレクターとして参加していました。
 
 
―選挙報道のあり方のように、テレビ報道に携わりながら、様々なジレンマも抱えていたのでしょうか?

ジレンマって、恐らく僕だけではなく、ディレクターやテレビ、新聞の現場の記者も常に抱えていると思うんです。自分が取材したものがニュースにならなかったり、取り上げられなかったり。「報道特集」では比較的、問題提起したことをやらせてもらっていましたし、「何のためにこれをやるのか」という番組内の議論も行える、今思えば充実した時間だったかもしれません。

ただ、そのようなウィークリーの特集番組ではなく、日々のニュース番組の中で、徐々に「特集」の枠が少なくなっていきました。こうした流れ自体が、今のテレビの現状を表しているようにも思います。僕や若いディレクターにとって、「特集」の取材というのはひとつの目標地点でもあったので、その「目線」が問われる枠がなくなってしまったことが、僕にとって大きな契機になりました。
 
 
―今はテレビ報道の現場を離れ、「Choose Life Project」の専属となっていますが、今後どのようにプロジェクトを継続させるのでしょうか?

これまでは基本的にボランティア、手弁当、無償でやってきました。幸いなことに生配信を始めてから、Liveチャットの「投げ銭機能」で、視聴者の皆さんから「これでお弁当食べて!」と支援を頂くようになりました。パソコンひとつで行っている配信なので、そこまでコストがかかっているわけではないんです。とはいえ、周りの方にずっと無償で手伝って頂くわけにもいかないので、クラウドファンディングを立ち上げて、そういった方々にお礼をできるようにすることも含め、継続的に活動できる体制を作りたいと思っています。
 
 
―メディア不信が叫ばれている中ですが、メディアは今後、どんなチャレンジをしていくべきなのでしょうか?

僕自身は新しいことにチャレンジしているというよりも、今まで自分がテレビで学んできたことを活かして、テレビ番組を作っている感覚で取り組んでいます。「じゃあなんで、都知事選の討論会できたんですか?」とよく聞かれるのですが、ああいった番組がテレビでできないことは全くないんです。僕らも特別なことをやっているっていう意識なく取り組んでいました。
 
 
―そこで何か「テレビとはこうだ」という決めつけが、柔軟さを阻んでしまうのでしょうか。

黎明期のテレビを作ってきた方が書かれた本の中で、「アマチュア性を大事にする」という言葉が目に留まったことがありました。僕はそれまで、「テレビはこうだ!」「プロとはこうだ!」っていうことを教わってきたのですが、テレビを作ってきた大先輩のこの言葉に触れて、常識にとらわれずに、自由に表現していく感覚を常に持ちたいと思ったんです。
 

(撮影:安田菜津紀)

―「Choose Life Project」では、出演者の男女比も大切にしているところではないでしょうか。

それはすごく意識しています。今の日本の社会の構造からすると、表立って発言する識者は男性が多く、気づけばインタビューも男性ばかりになっていた、ということも少なくありません。テレビ番組を作ってきた僕自身にもそこに思いが至らないところがあったのですが、20代の若いメンバーが「おかしい」と指摘してくれたんです。それ以降、男女の割合を意識しながら出演のお声がけをしています。
 
 
―こうしてメンバー同士がフラットに意見交換をできるっていう土壌も大切なのではないでしょうか。

だからこそ、「Choose Life Project」は佐治がやっているメディア、と思われたくないんです。色んな人が参加できるメディアでありたいし、「メディアをつなぐメディア」をひとつの理念として掲げています。こうあるべき、と決めつけるのではなく、自由な意見を柔軟に取り入れていきたいな、と。だから何かを決める時はメンバーの合議制にすることを大事にしています。
 
 
―「Choose Life Project」をはじめ、ネットメディアなど新たな媒体が生まれていく中で、メディアの役割分担にどんな変化が起きるでしょうか?

先ほどもお伝えした通り、僕たちがやっていることはテレビにできないことではないし、むしろ僕はテレビに可能性しか感じていないんですよ。「対マス」、「テレビでできないことをネットでやる」と唱って分断したいのではなくて、テレビの可能性は信じながら、テレビがこれまで伝えきれていなかった大切なことをひとつひとつ丁寧に拾っていきたいな、と。その上で、大メディアと我々のように立ち上げたばかりのメディアの違いは何かと考えると、機動力や速さ、そういう変化に対応してすぐ「やろう」と決断できるスピード感だと思います。

逆に言うとテレビに本気を出されたら、「Choose Life Project」は必要なくなるんじゃないかと思ったり…(笑)
 
 
―これから法人化を目指すとのことですが、今後どんなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

政治や文化芸術をわけることなく論じられること、また、言論空間の自由の気風をどう保たせるのか、というところですね。先日、安田さんにも出演頂いた、香港の国家安全維持法を取り上げた企画で僕自身感じたところですが、意識しなくても自由に選択して自由に生活できていたはずの日々が、あっという間になくなってしまうことがあるんですよね。だからこそ日ごろの発信で、しつこくてもいいから何度も何度も大事なことを伝えていくことで、自由の気風を保てるようにしていけたらいいな、と思っています。著名人、芸能人の方も、ここだったら話せる、話してもいいんじゃないかという空気作りも、「Choose Life Project」ではやっていきたいと思っています。
 
 

【香港×台灣×沖縄の若者と考える 「香港国家安全維持法」をめぐって #StandWithHongKon】

 
 
―今後はマンスリー会員も募りながら、市民の支えで運営するメディアを目指していく予定なのでしょうか。
そうですね。企業の大口のスポンサーではなく、市民にスポンサーになってもらい、基本的には全て無償、オープンソースの形で配信をしていきたいと思っています。アーカイブとしても残るので、好きなときに見返していただいて、考えるきっかけを作っていければと思っています。

(インタビュー聞き手 安田菜津紀/2020年7月)

 
 
※この記事はJ-WAVE「JAM THE WORLD」2020年7月15日放送「UP CLOSE」のコーナーを元にしています。

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