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Reports

2019.11.21

「同じ過ちを繰り返さないこと」高校生・東北スタディツアー参加報告 高岡亜瑠

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2019.11.21

#tohoku2019

地震などの災害が起こると、どうしても直接経験した当事者とそうでない人、に分かれてしまいます。私はいま横浜に住んでいますが、昔住んでいた高知県田野町は近いうちに南海トラフで大規模な地震と津波に襲われるとの予想があります。実際に災害が起こったとき、大事な人の住んでいる場所が被害にあったとき、当事者ではない私には何ができるのか。それを知りたいと思ってこのツアーに参加しました。そこで初日、上野さんにお話を聞かせていただいた際に「外部の人ができることは何か、実際にしてもらって嬉しかったことや嫌だったことはあるか」という質問をしました。この問いに対して私は最初「人手が必要になるからボランティアが欲しい」「募金をしてほしい」などの答えを予想し、また、それなら自分も力になれるかも、と期待していました。でも違う答えが返ってきました。

それは、何より「教訓を自分の生活に生かしてほしい」というものです。自然災害で死傷者が出るということは、それ以前の災害で亡くなった方の命の意味を無駄にするのと同義だと教えてもらいました。もちろんボランティアや募金も大切ですが、それ以前に日本に住む全員が確実にやるべきことです。教訓に加えて予測・避難勧告などの正しい情報があるのに、自然災害での死者がゼロにならない。この事実には、強い憤りを感じます。

ツアーが終わってから1ヶ月、既にいくつか自然災害の情報を耳にしました。例えば8月14日の大分県大谷渓谷にて、BBQをしていた18人が孤立したというニュース。注意喚起の情報も過去の事例もあったのに避難していなかったそうです。自然災害では逃げないと助からないのにどうして逃げないのか。震災の教訓を知らないのか。同じように憤りを感じている人はいるのかと思いSNSを見てみると、「税金を使ってそんな人を助けるのか」という批判が大部分を占めていました。当事者が避難しなかったことはもちろんですが、SNSで批判して面白おかしく煽り立てる風潮が大きかったことにも本当にがっかりしました。せめてこの出来事が命の重みと教訓を発信するきっかけになっていてほしかったです。何よりも大切なのは、今ある命を守ることと失った命を無駄にしないことです。これを私自身も忘れないように、身近な大切な人に伝えていこうと思います。それが命に向き合うということだと思います。

3日間で色々な視点から震災についての体験を聞かせていただきましたが、震災のことは忘れてもらって構わないというお話も、事実を知って記憶に留めておいてほしいというお話もありました。一見正反対のことに思えますが、根底にあるのは先に述べたような「教訓を生かしてほしい」ということでした。私たち高校生が震災の教訓を全国に持ち帰り、防災を考え続けることこそが東北にとっての「復興」につながるのかなと思います。

少し話が逸れてしまいますが、このツアーを通して「知る」とは何か、について考えました。ニュースではわからない東北の空気や住んでいる人の顔、震災の現実を「知りたい」と思ってツアーに参加したけど、見たものや思ったことを完璧に共有することはできない。どうしたらいいんだろう。

知ることについて私が得た一つの答えは「同じ過ちを繰り返さないこと」です。例えば災害においては、死傷者の数や発生時刻を暗記することは何の助けにもならないし、「知る」こととは程遠いです。大事なのは「どうして被害を最小限にできなかったのか・どうすれば安全なのか」ということです。災害が起こったとき、避難を決断するのは勇気がいるかもしれないけれど、死んでからでは遅い。別の場所で起こった悲劇を、繰り返さないように対策を講じることが「知る」という行為なのだと思います。

1日目、上野さんのお話を聞いて思ったことがあります。インターネットやテレビで使われている「被災地」「被災者」という言葉がどれだけ表面的であるか、ということです。「被災者」と括られた人々は、みんな誰かの大事な家族や友達で、みんな違った思いを抱えていて、置かれている状況も違うはずです。難しいことではありますが、情報を受け取る私たちが「被災者」という言葉を自分のことのような距離感で捉えることが大切なのだと感じました。

そしてこの「自分のことのような距離感で捉えること」が「教訓を生かした防災」につながります。それを教えてくれたのは、2日目に陸前高田市を案内してくれた佐藤さんです。津波が15メートルきた、と知るだけではなくて「ここは海抜何メートル?安全な場所?」と考えるようにしてほしい、と言われて腑に落ちました。どこにいても同じです。今住んでいる場所には津波は来ないけど道路が液状化する場所かもしれない。避難所が安全ではないかもしれない。自分の命は自分で守らなくてはいけない。だから災害情報を調べる。これが防災なのだとわかりました。この教えは、三陸地方沿岸部で語り継がれている「津波てんでんこ(てんでんこ=てんでばらばら、個々)」という言葉に象徴されています。家や知り合い、仕事の心配をする前に自力で逃げ、生きること。

本当はまだまだ文字にしたい思いがたくさんありますが、長くなってしまったので最後にまとめようと思います。

大切なのは「同じ過ちを繰り返さないこと」。
そのために「知り」、「自分で自分を守る」。

こうまとめると、そういえば避難訓練で聞いたことあるな、と思います。でも実際に東北を訪ねてきちんと理解したことは、私の中でとても大きな意味を持ちました。今回学んだことを私なりに、周りへ伝えていこうと思います。災害で悲しむ人が、もういなくなるように。

2019.11.21

#tohoku2019