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D4Pメディア発信者集中講座2022

2022年夏、認定NPO法人Dialogue for Peopleは、若者世代(18~25歳)を対象に、「伝える」ことについて考えるイベント「D4P メディア発信者集中講座」(全3回)を開講しました。昨年に続き2度目の開催となります。

私たちは、日々発信され続けるニュースを通じて、世界の「今」を知ることができます。また、SNSなど気軽なツールを使い、自分たちでも発信を行っています。ニュースは、政界や芸能界など、自分とは接点のない著名人の最新情報や、社会問題のリアルなど、私たちが世の中を知るためのひとつの重要な情報源です。一方で、報じられ方によっては、誰かが傷ついたり、心が苦しくなったりすることもあります。

誰もがメディアに触れ、そしてメディアになりえる今、「伝える」ことの意味や影響、可能性について改めて考える——社会課題に近い立場で、その背景や思いを「伝える」活動を続ける講師陣からの講義や、参加者同士の交流の時間を通じて、23名の受講者の方々とともに、学びを深める時間を過ごしました。

開催概要

日程 [1日目] 8月13日(土)9:30~18:40
[2日目] 8月14日(日)10:00~18:40
[3日目] 9月3日(土)10:00~18:40
受講者 23名
開催場所 都内会場

参加者の声

「影響力」を学ぶのではなく、どう取材対象者と向き合い、その声を伝え、受け手にどう動いてもらうかをこの講座で学ぶことができました。課題に対するフィードバックや一緒に受講した仲間との視点の共有は心の指針にもなっています。このような機会をいただけたこと、大変うれしく思っています。(学生)

難解でセンシティブな事柄について発信をする必要のある仕事柄、どういう表現であればより多くの人に的確に伝えられるのか悩んでいました。これは今も正解がありませんが、受講を通して、講師の先生方、また参加者の最終課題から、伝えることは必ずしもその場での効果だけではなくて、思わぬところで思わぬ誰かに届くこともあって、即時的なものであっても、目先に囚われすぎず続けていくことが大事なのだと実感しました。熱のある真剣な空気感のなかに発言しやすい安心感があって、とても参加しやすかったです。(社会人)

こんなにも一人ひとりの内面にある思いを、聞き合う時間だとは思っていませんでした。葛藤も、後悔も、答えの見出せていない問いも、ぜんぶ携えて「伝える」ということを模索していきたいと思いました。憧れの方々のお話に多くを学び、なによりその人柄に触れられたことが嬉しかったです。(学生)

これから発信を行いたい人は勿論、情報を受け取る側の自分を再考したい人、メディアに関わるあらゆる人々に受講をお勧めしたいです。きっとそれぞれに必要な気づきや学びを得ることができると思います。(社会人)

D4P代表 佐藤慧 メッセージ

さまざまな情報を通じて、僕たちは世界を理解しようとします。それは文字や音声、映像や写真、その他の抽象的な表現であることもあります。インターネットやSNSの発達により、誰もが発信者となれるこの時代にあって、その発信の影響や役割を考えることは、今後より一層重要となっていくことでしょう。そうした発信は、何も情報の受け手のためだけにあるわけではありません。たとえば社会問題に関する報道は、多くの人がその問題の存在を知ることで、「解決しなければ」という思いを抱いたり、「こういった方法はどうだろう」と、知恵を持ち寄ったりするために欠かせません。一方でそうした報道は、その社会問題の当事者たちにも大きな影響を及ぼします。報道の角度が少し違うだけで、当事者たちに対する受け手の印象は変わります。時には、無自覚な偏見や偏狭な価値観を助長してしまい、問題解決とは反対の影響を及ぼすこともあります。被取材者が発信に「同意」したとしても、そうしたリスクの全てを把握・理解できていない場合もあります。単に情報を発信するという視点ではなく、大局的・構造的な視点を大切に発信を行うことこそ、これからの時代に必要なものではないでしょうか。今回の講座では、最新のメディア論や直接支援関係者の視点、現場取材の体験から学んだことなどに触れることで、そうした視座を相互に育んでいけたらと思っています。

登壇者プロフィール

荻上チキ(おぎうえ・ちき)
1981年兵庫県生まれ。評論家。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。NPO法人「ストップいじめ!ナビ」代表理事。一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」所長。ラジオ番組「荻上チキ・Session」(TBSラジオ)メインパーソナリティ。「荻上チキ・Session-22」で、2015年度ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞、2016年度ギャラクシー賞大賞を受賞。著書に『未来を作る権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『いじめを生む教室 子どもを守るために知っておきたいデータと知識』(PHP新書)など。


伊藤詩織(いとう・しおり)
1989年生まれ。ジャーナリスト。BBC、アルジャジーラ、エコノミストなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信している。国際的メディアコンクールNew York Festivals 2018では制作したドキュメンタリー『Lonely Death』(CNA)と『Racing in Cocaine Valley』(Al Jazeera)が2部門で銀賞を受賞。性暴力被害についてのノンフィクション『Black Box』(文藝春秋社)は本屋大賞ノンフィクション部門にノミネートされる。第7回自由報道協会賞では大賞を受賞し、6ヶ国語/地域で翻訳される。2019年ニューズウィーク日本版の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。2020年米TIME誌の世界で最も影響力のある100人に選出される。


安田菜津紀(やすだ・なつき)
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。


師岡康子(もろおか・やすこ)
弁護士。外国人人権法連絡会事務局長。東京弁護士会外国人の権利に関する委員会委員、外国人人権法連絡会事務局長、大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター客員研究員、国際人権法学会理事。主著に「ヘイト・スピーチとは何か」(岩波新書、2013年)。


小川たまか(おがわ・たまか)
1980年東京生まれ。大学院卒業後、2008年に共同経営者と編集プロダクションを起ち上げ取締役を務めたのち、2018年からフリーライターに。Yahoo!ニュース個人「小川たまかのたまたま生きてる」などで、性暴力に関する問題を取材・執筆。著書に『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)、共著に『わたしは黙らない―性暴力をなくす30の視点』(合同出版)


佐藤慧(さとう・けい)
1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト、ライター。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第二回児童文芸ノンフィクション文学賞など受賞。東京都在住。


徳田太郎(とくだ・たろう):ファシリテーター
1972年、茨城県生まれ。法政大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(公共政策学)。
2003年より、「参加と熟議」をテーマに、市民活動や地域づくりの支援・促進を続ける。NPO法人日本ファシリテーション協会では、事務局長、会長、災害復興支援室長を経て、現在フェロー。その他、法政大学大学院・法政大学兼任講師、Be-Nature Schoolファシリテーション講座講師など。「いばらき原発県民投票の会」元共同代表。
著書に『ソーシャル・ファシリテーション:「ともに社会をつくる関係」を育む技法』(鈴木まり子との共著、北樹出版、2021年)、編著書に『いばらき原発県民投票:議会審議を検証する』(佐藤嘉幸との共編著、読書人、2021年)。