夏休みにかんがえる「戦争」のこと
● ステップ3:だれかに伝えてみる
ここまで、「よむこと」「あしを運ぶこと」から「戦争」について考えてきました。「こんなことがあったのか、知らなかった」と新しい発見があったかもしれません。「なんでこうなっているんだろう」と、さらに疑問がわいてきたかもしれません。みなさんが感じたこと、考えたこと、すべてがかけがえのない大切なものです。
その気づきや考えを「だれかに伝えてみること」これが3つ目のステップです。
どんな形でもかまいません。先生やクラスの前で発表することもすばらしいですし、家族や、友だちにお話ししてみることも、同じくらいすてきです。読書感想文や自由研究のように、形にのこして伝える方法もあります。
どうして戦争について考えるとき、「伝えること」が大切なのでしょうか。
それは「知ること」が、この世界でくり返される戦争を止めるためのカギとなるからです。戦争が、たくさんのものをこわし、うばいます。戦争から何年たっても、苦しみはつづきます。それを知ったとき、「戦争が起こるのはしかたない」とは、とうてい思えないはずです。だからこそ、気づいた人が、今度は知る機会をまわりに広げていくこと。「戦争はもうやめよう!」と、一緒に声をあげる人をふやしていくことが、大切なのです。
D4Pのフォトジャーナリストは、世界各地で戦争について取材し、写真、文章、映像などさまざまな方法で「伝える」活動をつづけています。そのひとりである佐藤慧は、今まさに学校や、さまざまな場所で学んでいるみなさんに向けてこう書いています。
そう、君は戦争を止めることができる。そしてもっともっと、すばらしい世界をつくっていける。もちろん僕たち大人も、がんばります。これから大人になる君たちに負けないように、戦争を止める方法について、考えていきたいと思います。
(『10分後に自分の世界が広がる手紙 勉強なんてしたくない君へ』より抜粋)
「まずは知る、その次になにができるか」を考えつづけることで、みなさんとともに戦争がない世界へ歩みを重ねていけることを願っています。
D4Pのフォトジャーナリストにきく「伝えるときに大切にしていること」
ともに戦争について考え、伝えようとしてくれるみなさんへ、D4Pのフォトジャーナリストである佐藤慧と安田菜津紀からのメッセージです。「伝えるとき、どんなことに気をつけたらいいんだろう?」と、思ったときに。
佐藤慧(D4P代表/フォトジャーナリスト)
こんにちは。Dialogue for Peopleの代表で、フォトジャーナリストの佐藤慧といいます。何かを「伝える」ときに大切にしているのは、「それを伝えたらどんな影響があるだろうか」ということです。大変な状況におかれた人々の声をとどけることで、問題解決につながるかもしれない。けれど逆に、誰かを傷つけてしまうこともあるかもしれない。なぜ自分はそのことを「伝えよう」と思っているのか。自分勝手なエゴや自己満足におちいっていないか、誰かの声をうばっていないか、常に考え続けることが大切だと思っています。
安田菜津紀(D4P副代表/フォトジャーナリスト)
Dialogue for Peopleフォトジャーナリストの安田菜津紀です。「伝える」ためにはまず、誰かの話を丁寧に聞く必要があります。相手から時間を頂き、言葉を頂く作業です。その「頂く」に感謝と敬意を持ちながら、どんな言葉や写真を選ぶべきかを考えています。特に私たちが取材する人たちは、貧困や紛争、差別に直面するなど、困難を抱えている人たちです。けれどもそれが多くの方に伝わらなければ、「社会問題」として認識されません。だからこそ、「ここにこんな問題を抱えている人たちが生きている」「こんな支援が足りていない」ということに加え、「それをあなたはどう思いますか?」と、情報の受け手自らが「考える」ことができる伝え方を心がけています。
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