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パレスチナ連帯を叫ぶヒップホップ––抵抗のためのプレイリスト

パレスチナで続く凄惨な殺戮や占領に対して、ヒップホップの音楽やラップで抵抗と連帯の声をあげる人々がいます。ドイツ・ベルリンに拠点を置く音楽ライター・翻訳家の浅沼優子さんに、パレスチナ・ヒップホップ3曲を選んでいただき、D4Pがおすすめする曲とともにご紹介します。

1990年代からアラブ圏に浸透したヒップホップ。今回ご紹介したリスト以外の曲にもぜひ耳を傾けてみてください。

▶浅沼優子(あさぬま ゆうこ)さんプロフィール

フリーランスの音楽ライター、翻訳家、字幕制作者、通訳。2009年よりベルリンに拠点を移し、それをきっかけにDJやアーティストのブッキング業務に携わるようになる。2020年にブッキング・エージェンシー「setten」を立ち上げ、現在は音楽イベントのプロモーションやキュレーションも行っている。訳書に『アンジェラ・デイヴィスの教え: 自由とはたゆみなき闘い』(河出書房新社)がある。

Dakn x Muqata’a – Fi Mi’ad (Prod.Dakn) / (2021) في ميعاد – داكن و مقاطعة

現在、ベルリンで最も交流の深いラマッラー出身の二人のアーティストの最高にカッコいいコラボレーション曲。2021年5月の「ガザ紛争」に対する抗議活動に連帯して作られた曲。イスラエル軍や警察に対し、怯まず抵抗する女性や若者たちの姿が映し出されるMVが印象的。音楽的には現代的なドリルのスタイルを採用した、まさにレジスタンス讃歌。(浅沼優子)

Daboor & Shabjdeed – Inn Ann (Prod. Al Nather) / (2021) ضبــور وشب جديد – إن أن

この一年、最もクラブや音楽イベントでプレイされたのを聴いたパレスチナ・ヒップホップのヒット曲。同じくラマッラーを拠点にする人気アーティストAl NatherとShabjdeedが送り出したエルサレム出身の若手ラッパーDaboorのバトル・スタイル・ラップがカッコいい。(浅沼優子)

DAM – Who’s The Terrorist? / دام مين إرهابي (2003)

私は昨年ドキュメンタリー映画『自由と壁とヒップホップ』を観て初めて知った、最も初期のパレスチナ人・ヒップホップ・グループ、DAMの楽曲。これはアラビア語歌詞の英訳も出回っているので内容を把握することができるが、約20年前からパレスチナの状況を見て浮かび上がる疑問は変わらない… 「一体誰がテロリストなのか?」

(この頃、私も好きだったミネアポリスのヒップホップ・グループ、Atmosphereの「If I Was Santa Claus」と同じビート。)(浅沼優子)

※DAMメンバーのように、イスラエルに生きるアラブ・パレスチナ人とは?

MACKLEMORE – HIND’S HALL /(2024) ※D4P’s Recommend

D4Pからは、同じヒップホップでもアメリカのアーティストをご紹介します。パレスチナ情勢において、決して部外者とは言えないアメリカ。そんなアメリカの音楽シーンで活躍するミュージシャンもまた、イスラエルによる暴力や傍観する世界に対して怒りを抱え、パレスチナと共に抵抗する人々への鼓舞を、その歌に乗せています。ぜひご視聴ください。

現在のパレスチナの状況に沈黙(そしてくだらないビーフ)を続ける世界への怒りと、その状況に声を上げる人々への連帯を、ストレートなリリックで示した一曲。イントロの印象的なリフは、アラブの象徴的な歌手フェイルーズの楽曲をサンプリングし、ビートにおいてもパレスチナへのリスペクトを表した。なによりトム・モレロからの「Hind’s Hallはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン以来、最もレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンな曲だ」という言葉はプロテストソングとして最大級の評価ではないだろうか。

※フェイルーズとは?

1935年生まれ、レバノン出身の女性シンガー。「Maarifti Feek (愛しのベイルート)」(1987)は、レバノン内戦の最中に歌われた一曲。

もっと聴きたい方へ—抵抗のためのプレイリスト

▼D4PのYouTubeでは、今回ご紹介しきれなかった曲やパレスチナ連帯を歌う日本のアーティストの曲も含めたプレイリストを公開しています!

▼浅沼優子さんが配信されているオンライン・ラジオKumo RadioのAIWA!シリーズでは、他にもアラブ・ヒップホップを紹介されています!

ガザ地区にイスラエルが建設した「分離壁」に描かれているグラフィティ。(2019年9月 佐藤慧撮影)

▼あわせて聴きたい

Radio Dialogue_180「ガザを語ろう」(ゲスト:いとうせいこうさん・浅沼優子さん|安田菜津紀・佐藤慧 2024年10月2日配信)

国際社会がジェノサイドを止められずにいる中、ガザからは「私たちは死傷者数という”数字”ではなく生きた人間だ」という声が届きます。この虐殺は「対岸の火事」なのでしょうか? ガザの取材経験もある作家・クリエーターのいとうせいこうさん、ドイツ在住で、「イスラエル批判」が許されないドイツの現実を伝える音楽ライター・翻訳家の浅沼優子さんと一緒に考えていきます。

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