イラク、バグダッドから北東約260キロ、北部のクルド自治区の中でも東端に位置するハラブジャの街――。雪に染まる山脈を越えたらもうそこはイランだ。ハラブジャは1980年から続いたイラン・イラク戦争の最前線として、フセイン政権下のイラク軍に化学兵器を投下された。1988年3月16日、空から落ちてくる大きな鉄の塊は、のどかな街を地獄へと変えた。亡くなった住人たちの数は当時の街の人口の1割を超える、約5千人に及ぶとされている。
化学兵器の被害は今も続いている。当時のイラク軍の化学兵器製造に関係した欧州企業の責任追及や、今も投薬の必要な方々の支援などを行っているNGO Harabja Victims Society代表のロクマン・ムハンマドさんと、被害者の方々を訪問した。彼自身、当時20歳で毒ガス被害に遭い、九死に一生を得た。今も後遺症に苦しんでいる。被害は毒ガスによるものに留まらない。化学兵器の詰まった爆弾の破片により四肢を失った人や、「周囲に感染する」という謂れのない差別に苦しんでいる人もいる。
戦争・虐殺の被害は何十年にも渡り人々に、社会に影を落とし続ける。「新たな悲劇が起こる度に、過去の悲劇は忘却されていく」、そんな言葉を被害者の方に聞いた。詳細はまた帰国後に報告します。
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