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「政治」が子どもたちを排除することのないように―川崎朝鮮初級学校の給食ボランティア「トングラミ」の人権賞受賞

授賞式でスピーチを行うトングラミ代表の平賀萬里子さん。(佐藤慧撮影)

昨年(2025年)12月1日、川崎朝鮮初級学校で給食ボランティアに取り組む「トングラミ」、そして在日ラテンアメリカ系住民に母国語での電話相談を提供している「横浜いのちの電話外国語相談」が、神奈川県弁護士会の人権賞を受賞した。

30年以上にわたり電話相談を実施してきた「横浜いのちの電話外国語相談」でコーディネーターを務める藤井豊美さんは、「誰かが自分の話を聞いてくれるだけで、心がふっと軽くなる瞬間があります」と語った。

「人生では誰もが困難に直面します。経済の不安、人間関係の悩み、健康の問題、こうした重みは心に大きな影響を与えます。さらに異国で暮らす場合、その重さは一層増します。文化の違い、言葉の壁、家族との距離、不安定な労働環境。それらは無力感や孤独、絶望に心を深く傷つけます。だからこそ、母国語で安心して話せる場所は、とても大切な心の支えになると思います」

トングラミ代表の平賀萬里子さんは、「日本政府は拉致問題を理由に、2011年、外国人学校の中で唯一、朝鮮高校を授業料無償化から排除しました(※)。その後2013年には、神奈川県、横浜市、川崎市も、政府と同じ見解で前年まで出ていた授業料補助金をいきなり止めました。すでに今年で12年が経過しています。学校の運営も厳しさを増し、保護者の負担も増えています」と、朝鮮学校の直面している差別、困難について語った。

(※)2010年施行の「高校無償化法」において、朝鮮学校は当初対象として検討されたが、同年11月の大延坪島砲撃事件を受けて審査が停止。その後、2013年2月に第2次安倍内閣が「拉致問題の停滞」や「朝鮮総連との密接な関係」などを理由に省令を改正し、正式に対象外とした。

朝鮮学校などの外国人学校の多くは、法的には「一条校」(学校教育法第一条に定められた「学校」)ではなく「各種学校」に分類されている。この区分を理由に、学校給食法を含む多くの公的支援から事実上排除されているのが現状だ。

川崎市は全国の自治体に先駆けて「子どもの権利に関する条例」を2001年に施行している。この条例では、「すべての子どもの学ぶ権利の保障」「民族や国籍によって差別をしてはならない」「子どもたちの最善の利益の確保」といったことについて規定されている。

平賀さんは、「この条例を朝鮮学校に適用させないことは、条例違反にほかならないと思っています」と述べ、給食支援活動に加え、「授業料補助金再開に向けた活動」も必要だと結んだ。

「トングラミ」は授賞式時点で初級学校の生徒と付属幼稚園の園児に月2回、4年間で計71回、合わせて3160食を提供した。昨年12月からは、週1回の活動を行っている。

「トングラミ」の給食に並ぶ子どもたち。(佐藤慧撮影)

12月12日、トングラミの給食支援活動が行われている川崎朝鮮初級学校では、綺麗に盛り付けられたカレーに生徒たちが喜びの声をあげていた。早々に「おかわり」に並ぶ子もいる。

今年創立80周年を迎える川崎朝鮮初級学校の姜珠淑校長は、「これまでも地域の方々と共に、子どもたちの教育環境が守られ、保障されてきたという経緯があります」と語り、「生徒たちはみんなトングラミの給食が大好きです」と、顔をほころばせた。

前述の平賀さんの指摘の通り、子どもの学ぶ権利や最善の利益の確保が行われていない現状は、人権を土台とする社会から逸脱している。「政治」が子どもたちを排除することがあってはならない。

丁寧に盛り付けられたカレー。(佐藤慧撮影)

Writerこの記事を書いたのは
Writer
フォトジャーナリスト / ライター佐藤慧Kei Sato

1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第2回児童文芸ノンフィクション文学賞、『10分後に自分の世界が広がる手紙』〔全3巻〕(東洋館出版社)で第8回児童ペン賞ノンフィクション賞など受賞。

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