【イベントレポート】「あなたと、わたし」重版記念イベント(2019.5.16)
date2019.5.24
categoryイベントレポート
「いつかなっちゃんの写真に言葉を添えたい」、女優のサヘル・ローズさんが、嬉しそうにそう語った。昨年12月10日に刊行された写真詩集、「あなたと、わたし」(日本写真企画)では、サヘルさんの紡ぐ言葉と、安田菜津紀の写真が一体となりひとつの世界をつくりあげる。そして先日5月16日、この本の増刷記念イベントが、池袋のAbsolute Blueで開催された。特別ゲストにはシンガーソングライターのタテタカコさん。力強いピアノと透き通る歌声、独特の世界を描き出す歌詞が、サヘルさん、安田の世界と共鳴し合う。満員の会場で観客が開演を待ち、静かに息をのむ。そして、言葉が紡がれた。
この声、アナタには、きこえていますか?
わたしを愛してほしい。
あなたと、わたし
【イベントAfter Movie】※音声が流れます。
詩集の冒頭の言葉をサヘルさんと安田が読み上げる。一曲目『誕生日』を奏でるピアノの1音目が鳴り響いた瞬間、思わず鳥肌が立った。明るくお祝いするような曲調とは異なり、見えない人生への覚悟を示すような壮大さを感じるこの曲が、希望だけではなく人生の苦しさも綴られる『あなたと、わたし』の誕生を祝うようだ。
どこかで
そう
どこかで
原点の音を探す。
そう
どこかで
どこかで
みんな
音のように跳ねている。
そう
今もどこかで
音がおどりだす。
安田が語りかける。そこにタテさんの伸びやかな歌声が響き渡った。曲目は『君は今』。きっと会場にいる人は皆、大切な人を思いながらこの曲を聴いたのではないだろうか。
MCのなかでは、『あなたと、わたし』ができるきっかけが語られた。サヘルさんの、安田の写真に言葉を添えたい、という思いからこの写真詩集ができたという。このきっかけをサヘルさんは「私からなっちゃんにプロポーズした」と話し、会場は笑いに包まれた。プライベートでも親交が深い二人の朗読は、タテさんが「幼馴染みたい」と言うほど、息が合っている。
昔はよく泣いた。
ないてないて、
まだ泣いた。
鼻水たらしてさ、
泣いたよ。
今はよく笑うよ。
笑ってわらって、
まだ笑う。
小ジワだらけでも、
笑うよ。
サヘルさんが子どもに話しかけるように、微笑みながら語る。続いて演奏された曲は、『今日を歩く』。「おいっちにぃ」という元気な歌詞とともに、無邪気に笑う世界中の子どもたちがスクリーンに映し出される。見ている方も、笑みがこぼれた。
終演後も鳴り止まない拍手。三人が再びステージに現れた。
アンコールでは、小さい頃から日記を書き、言葉を綴っていたというタテさんも朗読に加わった。
いま、
泣くことを忘れたアナタへ。
わらわなくていい。
笑いたくない時は、笑う事ない。
泣きたいんだよね?
だからさ、泣いてごらん。
思いっきり
泣いていいから。
隣でささやくように、タテさんがそっと詩を読む。続いて演奏された曲『道程』にある、「今悲しいのならここで涙を流し 今嬉しいのなら笑ってしまおう」という歌詞が、この詩とどこか繋がっているように感じた。
あなた自身を、愛してほしい。
わたしはあなたの視線から、生まれた
終わりを惜しみながら本の最後のページを閉じるように、喝采に包まれライブは幕を閉じた。
日々の生活のなかで抱く、うれしい、つらい、かなしい、たのしい。そんな、心の奥底で秘めているたくさんの感情を覗き、包み込んでくれるような時間だった。それはきっと、タテさん、サヘルさん、安田の三人が、言葉にできないような感情を、詩、写真、歌、それぞれの表現であらわしてくれたからだろう。
自分の心にそっと耳を澄ましたくなったときにはまた、『あなたと、わたし』のページを開きたいと思う。
*サヘル・ローズさんの言葉と安田菜津紀の写真とで作り上げた写真詩集『あなたと、わたし』、おかげさまで多くの方に読んでいただいています。ご購入はこちらから。
また、『あなたと、わたし』特設サイトでは書籍未掲載の詩と写真を公開中です。こちらもぜひご覧ください。
(文章 Dialogue for People事務局 大橋/写真 佐藤慧、Kameko)
あわせて見たい
■ 【イベント/アフタームービー】「あなたと、わたし」タテタカコ×サヘル・ローズ×安田菜津紀スペシャルコラボレーションライブ
世界各地での取材活動は皆様のご寄付によって成り立っております。世界の「無関心」を「関心」に変える、伝える活動へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。