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2023.3.7

入管法政府案閣議決定を受けて:本来の意味での「改正」を

2023.3.7

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2022年6月、世界全体で迫害や紛争により移動を強いられた人々が、初めて1億人を超えました。故郷を追われ、他国に逃れることを余儀なくされた人々が、世界のいたるところで散り散りとなり生活しています。

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻前、最も多くの人々が国外へと追いやられたのは、2011年から戦争が続くシリアでした。ある時、シリア国内に暮らす友人から、切実な相談を受けたことがあります。子どもの未来を考えて、日本で生活ができる道はないか、と。

「平和な日本なら、自分たちのことを《テロリスト》《危ない国から来た人》としてではなく、ひとりの人間としてみてくれると思うんだ」と、彼は目を輝かせました。そんな彼の期待を前に、複雑な気持ちがわきあがりました。果たして日本は本当に、彼を「ひとりの人間」として受け入れる社会でしょうか。

凍える寒さの中、ぬかるみに囲まれた避難民キャンプを訪れたとき、ひとりの父親がこう尋ねてきました。「日本は平和な国なんだろう? 自分たちも日本に身を寄せることはできないだろうか?」。テントの中で暖をとる子どもたちの顔を見つめ、彼は続けました。「私たち全員が難しいのなら、せめて、子どもだけでも連れていってもらえないかな?」。

こうした声をかけられることは少なくありません。ところが、日本の実態はどうでしょうか。藁をもつかむ思いの親たちに、私たちはこう、語らなければならないのでしょうか。「日本で難民として保護される可能性はほとんどありません。一時的に滞在できたとしても、在留資格を失うようなことがあれば、あなたたちは無期限の入管収容に苦しむかもしれないんですよ」と。

2023年3月7日、入管法政府案が閣議決定されました。2021年に廃案となった旧法案の問題点は「入管法はどう変えられようとしているのか?その問題点は?」にまとめた通りですが、それとほぼ変わらない法案が、これから審議されようとしています。

つまり、難民にほぼ門戸を閉ざした状態でありながら、3度以上難民申請をしている人たちは送還の対象になります。国籍国に「帰れない事情」を抱え、国外退去命令に従うことができない人でも、それをもって処罰の対象になります。収容や解放の判断は、不透明な形で今後も入管が決定します。

「補完的保護」を設けるとしていますが、実際に在留資格を得る人が増えることは期待できないことも指摘されています。

これだけの非人道性が指摘されながらなお、国際法など存在しないかのように、差別を法制化していくのでしょうか。日本は、民主国家であることを止めたのでしょうか。「票にならない命」は二の次扱いなのでしょうか。政府の掲げる「多様性」は言葉だけのスローガンに過ぎないのでしょうか。

私たちはこれからも、取材先で出会う人々に、「日本には来ない方がいい」と言い続けなければならないのでしょうか。

人権は「トレンド」で恣意的に決められるものではありません。「注目されているから声をあげる」ものでもありません。それは、与野党ともに、問われていることでしょう。人道主義に基いた社会を目指すために、この政府案とは対極にある、本来の意味での「改正」を求めます。

2月23日、都内で行われた入管法改定などに反対するデモで。

2023.3.7

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