![]()
「入管は姉を助けることができた。でも、助けなかった」——ウィシュマ・サンダマリさん遺族の裁判、12月に判決へ

「入管と国が責任を認めないということは、反省していないということです。そして、同じことが繰り返されるということです。姉のような事件を絶対に繰り返してほしくないです」
満席の名古屋地裁の法廷に、ウィシュマ・サンダマリさんの妹で三女のポールニマさんの、静かに、けれども張りつめたような声が響き渡る。
名古屋入管で亡くなったウィシュマさんの居室の「監視カメラ映像295時間分」のうち、一部のみが裁判を通して開示されている。ポールニマさんは、衰弱していくウィシュマさんの映像を目の当たりにした際の心境を、時折声を詰まらせながらこう振り返った。
「姉が、『病院に持って行って(Byouin ni motte itte.)』『点滴お願い(Tenteki onegai.)』と入管職員に訴えているところがあります。私は、これを観て、『入管は姉を助けることができた。でも、助けなかった。姉を殺した』と思いました。裁判官のみなさまは、どう感じましたか?」

記者会見で発言するポールニマさん。(安田菜津紀撮影)
スリランカにいる次女のワヨミさん、母のスリヤラタさんの意見陳述もこの場で代読された。
「ウィシュマが亡くなって5年以上が過ぎました。懸命に助けを求めながら、決して手を差し伸べられることなく、苦しんで苦しんで死ななければならなかった、ウィシュマの死に、“正義の判決”が下されることを、私たち遺族は、これまで、ずっと待ち続けてきました」
傍聴席のあちこちからも、すすり泣く声が聞こえてくる。2022年3月の提訴から4年4カ月。この日裁判は結審を迎えた。
2017年6月、ウィシュマさんは「日本の子どもたちに英語を教えたい」と、英語教師を夢見てスリランカから来日したものの、その後、学校に通えなくなり在留資格を失ってしまった。2020年8月に名古屋入管の施設に収容されたが、同居していたパートナーからのDVと、その男性から収容施設に届いた手紙に、《帰国したら罰を与える》など身の危険を感じるような脅しがあったことで、帰国ができないと訴えていた。その後、体調を崩し、2021年3月6日に亡くなった。
亡くなるまでの3ヵ月ほどは、とりわけ顕著な体調不良を訴えており、尿検査の結果など、実際に異変を示すデータもある。しかし国側は「医療水準にかなった医療行為が行われていた」と、原告の訴えの棄却を求める立場を崩していない。
入管庁が公表した『最終報告書』には、ウィシュマさんを収容から解放しなかった理由として《一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国を説得する必要あり》という記載があるように、日本に留まることを諦めさせるための「手段」として収容を用いていたことが堂々とつづられている。しかし収容の本来の目的は送還されるまでの「準備」としての措置であって、「拷問の道具」として入管が恣意的に使うべきものではない。そして二度目の仮放免申請に対する判断が出る前に、ウィシュマさんは亡くなっている。
弁護団の児玉晃一弁護士は、そうした入管の判断を批判した上で、「ウィシュマさんは山奥で遭難したのではありません、国の施設で、何人もの職員がいる中で命を落とした。どんなに悔しかったか」「(開示された5時間分のビデオだけでも)自分たちの手に負えない状態のウィシュマさんを解放せず、100%保護すべき命を救う措置ができていなかったことが如実に分かるはず」と強調した。
判決は12月11日に言い渡される予定だ。

裁判後の記者会見場に置かれたウィシュマさんの写真。(佐藤慧撮影)
Writerこの記事を書いたのは
Writer

フォトジャーナリスト安田菜津紀Natsuki Yasuda
1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙 ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
あわせて読みたい・聞きたい
本記事の取材・執筆や、本サイトに掲載している国内外の取材、記事や動画の発信などの活動は、みなさまからのご寄付に支えられています。
これからも、世界の「無関心」を「関心」に変えるために、Dialogue for Peopleの活動をご支援ください。
寄付で支えるD4Pメールマガジン登録者募集中!
新着コンテンツやイベント情報、メルマガ限定の取材ルポなどをお届けしています。





