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SUGIZOさんインタビュー 今なぜ声をあげ、社会に自分の意思を伝え続けるのか

今年5月、検察庁法改正案に幅広く反対の声があがる中で、著名人の“政治的発言”に対するバッシングも相次ぎました。LUNA SEA、X JAPANのギタリスト&ヴァイオリニストであるSUGIZOさんは、環境や難民問題をはじめ、社会的な問題に対して、自身の意見や考えを積極的に発信してきました。今なぜ、社会に対して「声をあげる」のか、その先にどんな世界を築きたいと考えているのかを伺いました。

©KEIKO TANABE


沈黙や無関心は現状への賛成と同じ

―これまで、社会問題に対して積極的に発言してこられましたが、どういったモチベーションで声をあげてきたのでしょうか?

僕はたまたまミュージシャンなだけ、たまたまアーティストであるだけで、一人の大人として世の中にコミットして、社会に対して自分の意思を訴えるということは当然あるべきだと思っているんです。そもそも“政治的発言”という言葉の使われ方自体が、言論を抑制しているようにも思います。僕はどんな職種であれ、よりよい世界をつくるために自分の意見を発信するのは当然だと思っています。

―「芸能人は政治に発言をするな」というタブー視はまだ根強いですが、「じゃあ、誰なら政治に発言していいの?」というところに行きつきますよね。

正直、僕に対してもそうしたバッシングは数多くあります。その中には、自分は専門家で博識だけれども、君は素人だから黙っていなさい、というような上から目線的のものが少なくない。もちろん僕を含めて皆がより社会のために学ぶことは大切です。が「発信の自由」はどんな人でも持つべきだと思います。特に最近は、SNSのおかげで一人ひとりがメッセンジャーになれるし、誰もが表現者になれる。「素人は黙っていなさい」となると、専門家でなければ政治に対して、法律に対して、差別に対して、戦争に対して、発信をする権利さえないのかということになってしまいます。

2019年10月、イラク北部、クルド自治区アルビルのJIM-NETハウスで演奏するSUGIZOさん。JIM-NETハウスは小児がんの子どもたちとその家族のより所だ。 ©KEIKO TANABE

―〇〇は政治に発言するな、は突き詰めていくと、私たちが何のために学ぶのかというモチベーションを奪っていくものですよね。考えなければならないことが山積みですが、今とりわけ気になる社会問題は何でしょうか?

今国内でも、世界でも、驚くほど次から次へと問題が噴出してきていますよね。例えば今日(6月17日)通常国会が閉会しましたよね。このコロナ禍で、補償が国民にまだ完全に行き届かず、大多数の人が満身創痍の状態にあるにも関わらず、それを切り捨てるような政治のアティチュードにはすごく不満が募ります。

検察庁法改正案も廃案になりましたが、僕らはそこに対してもっとしっかりとした説明を求める権利があるし、その後、河井夫妻が逮捕された事件もありました。財務省近畿財務局の赤木俊夫さんが亡くなり、再調査を求める35万筆もの署名を無視していることも、まだまだ政府は僕らに説明する必要があるのではないかと疑問や憤りを感じますね。

この状況下で世の中に、もしくは政治に、選挙に、ちゃんと一人ひとりが強い意識を持って、「おかしいな」と思っていることがあったら、より良い方向に変えるために自分の一票を使うということがすごく大事だと思います。海外ではまさに「Black Lives Matter」を中心とした、差別に対する大きな社会的な意識やうねりが起きていて、それは日本も他人ごとじゃないですよね。

JIM-NETハウスで、SUGIZOさんの演奏に子どもたちも興味津々だった ©KEIKO TANABE

―もうすぐ都知事選ですが、前回の投票率は59.7%、つまり4割の方が投票していないということですよね。

とても恥ずかしいことだと思います。例えば多くの国の仲間がいたり海外で長く活動していると、日本人の社会にコミットするという意識の甘さが痛切に露呈して見えてしまうことがあります。投票率ってその最も分かりやすい結果じゃないですか。

結局、沈黙や無関心は現状に賛成していることと同義語だと思います。もし、今の日本や世の中で、変えていきたい、これじゃ困る、これはアンフェアだって、少しでも思うことがあれば、やっぱり自分の行動、自分の一票ってすごく大切になってきますよね。

―その一方で、「選挙に行っても何も変わらない」という諦めのような声も耳にすることがあります。

辛辣な言葉で申し訳ないのですが、それは状況の認識に対する甘えだと僕は思うんですよね。例えば、日本も女性に参政権、選挙権がなかった時代があったわけです。女性の皆さんが、一人ひとりの人権をしっかりアピールして、どんな立場でもこの国に対して一票を持ち得るということを勝ち取ってきたわけじゃないですか。過去の世代の人たち、僕らの親や祖父母の時代に勝ち取ってきたかけがえのない権利を、今の世代の僕らが放棄してしまうって、すごくもったいないし、もっというと失礼なことだと思うんですよ。シリアのように、政治に対する自由を持ち得ない国もあるわけで、僕らがそれぞれ一票持っているということ自体、実はとてもありがたいことなんですよね。

シリア北東部、IS(過激派勢力「イスラム国」)によって破壊された教会(2019年12月)


難民キャンプへの訪問を重ねながら

―SUGIZOさんは、Dialogue for Peopleの佐藤慧、JIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)の斉藤亮平さんと三人で、難民キャンプを訪れて演奏するバンド、「ババガヌージュ」を結成して活動してきました。昨年はDialogue for Peopleが主体となっての『BABAGANOUJ PROJECT 2019』で、イラク北部のクルド自治区を訪れ、ヨルダンも再訪されました。

漫画「クルドの星」を読んでいたこともあって、クルド自治区は僕にとっては憧れの場所でもありました。中心地にあるエルビル城の美しさは本当に皆さんにお見せしたいです。クルドの人々は「イエーイ!」というアゲアゲの感じではなくて、奥ゆかしさがある。その温かさ、心遣い、ほっこりした感じに感動しました。ただ僕らが訪れていたのと同タイミングで、バグダッド周辺は一触即発の緊張感の中にありました。

―反政府デモで沢山の方が既に亡くなっていましたね。

クルド自治区はその緊張感とは離れて、とても平和な印象がありました。本当に美しい場所で、皆さんの温かさが忘れられません。ところが僕らが訪れた直後に、隣国シリアで、クルドの人々が暮らす北部にトルコが侵攻するというすごく悲しいことも起きてしまいました。

―こうした情勢に、市民が翻弄され続けてきたわけですよね。とりわけ印象に残っていることはありますか?

例えば隣国シリアの人たちが避難生活を送るダラシャクラン難民キャンプでは、多くの人がギリギリの状況で生活をしています。基本的には子どもが多いのですが、訪問したご家族のお子さんの一人は障害を持っていました。JIM-NETがこのキャンプで活動しているので、多少なりとも余裕がある人たちが、こうした団体を通してあらゆる手を差し伸べてみたり、まだまだ支援できるやり方があるんだっていうことを実感してきましたね。

ダラシャクラン難民キャンプで訪問したご家族 ©KEIKO TANABE

―この滞在では、シリアの南側の隣国にあたるヨルダンも再訪されましたね。

最初に行ったのはもう4年前、2016年3月でした。その時に出会ったシリアの人たちの中で、何人かのご家族と再会ができました。再び会えただけでも、涙が出るぐらい感動しました。当時まだ赤ちゃんだった子が、今はわんぱく坊主になっていたり、4年前はシャイな女の子だった子が、今は家族を支えるぐらいしっかりしていたり。子どもたちの成長がすごくリアルに伝わってきて、もう“親戚のおじさん”みたいな気持ちですよね(笑)。皆さんもちろん、生活は相変わらず大変なんですけど、4年前に訪れた時の劣悪な環境が少し改善されて希望の兆しが見えたり、小さな子どもの成長だけではなく新しい子が産まれていたり、少しでも上向きのエネルギーを感じられたのは、もの凄く幸せなことでした

2016年、はじめてヨルダンを訪問した際に出会ったハーミドくん (撮影:佐藤慧)

2019年10月、再会したハーミドくん ©KEIKO TANABE

―一方で今は、新型コロナウイルスの蔓延で、支援団体が現地から撤退せざるをえなかったり、紛争が続いている場所から人々が国境を越えられず、「難民」にさえなれなかったりする状況があります。

まず、この状況で紛争は絶対に止めるべきですよね。今はそれどころじゃない、別の所にエネルギーを使うべきです。訪れてみるとより分かりますが、難民キャンプは衛生面で問題を抱えていたり、いわゆる「3密」が避けられない所にあったりするので、心から心配です。ただ、マスクや薬など、日本から物資の支援をしたくても、思うように届けられない状況です。皆さん元々劣悪な環境の中、ギリギリで生きています。医療環境も整っていない中、ウイルスの脅威は、僕らとは全然違ったレベルで襲いかかっています。

―こうした状況で何ができるのかは、とても難しい問いだと思います。寄付をすることはもちろんですが、さらに大きな枠組みで、戦争や迫害を止めよう、と声をあげることも不可欠ではないかと思います。

それは本当にベーシックなことですよね。結局、これまで出会ってきた難民の皆さんの多くは紛争の犠牲者で、常に弱い立場の人たちがそこに巻き込まれていく。その理不尽な世の中を心から変えたいと思うし、同じような意識を多くの人に持ってもらいたいっていう希望があります。

再訪したヨルダン、ザータリ難民キャンプで演奏するババガヌージュのメンバー ©KEIKO TANABE

―SUGIZOさんは被災地のボランティアや、難民キャンプでの演奏、様々な活動を積み重ねてきましたが、どんな世界を目指しているのでしょうか?

すごくシンプルなことになってしまうのですが、やっぱり全ての人が生まれてきたことを祝福してもらえる世界、あらゆる人々がその人種や民族、信仰や主義、その違いを超えて理解し合って共存できる世界、お互いに心から寄り添える世界、肌の色が違ってもお互い重んじあえる世界だと思います。違いを攻撃したり非難したりする必要はなくて、違っていても仲間になれるんですよ。その温かさ、心の光の部分を最も大切にできる世界は、同時に、自然界や全ての生き物たちとも共存できる世界であるはずです。大きな意味で持続可能な世界ですよね。そんな未来を願って止みません。

夕方、エルビル城からスーク(市場)を見下ろす ©KEIKO TANABE

(聞き手:安田菜津紀/2020年6月17日)
(インタビュー書き起こし:永瀬恵民子)

※この記事はJ-WAVE「JAM THE WORLD」2020年6月17日放送「UP CLOSE」のコーナーを元にしています。

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