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取材レポート

2021.6.7

在留資格の有無を「生きられない理由」にしないために ―無保険による高額医療費、支援団体が訴え

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2021.6.7

取材レポート #収容問題 #人権 #法律(改正) #安田菜津紀

スリランカ出身のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋入国管理局(以下、名古屋入管)収容中に亡くなってから、3ヶ月が経った。いまだ真相は解明されず、入管庁の「内輪調査」は続いている。その上、入管の施設内での収容者への対応は、ウィシュマさんが亡くなった後もなお、改善が見られないと支援団体が度々指摘をしてきた。
 

生前のウィシュマさん(ご遺族提供)

ウィシュマさんとも面会を重ねていた支援団体「START」メンバーは、6月2日、収容者の処遇についての申入書を名古屋入管に提出した。
                     
同書によると、収容中のナイジェリア国籍の男性Aさんは、5月26日夜から食事を摂ることができず、水を飲んでも吐いてしまう状態にまで体調が悪化していたという。一度は外部病院で点滴を受けたものの、飲食できない状態が変わらないことを理由に、5月31日、職員らはAさんの意思に反して単独室へ移動させた。Aさんはウィシュマさんが単独室で亡くなったことを知っていたため、恐怖を感じていたものの、20人ほどの男性職員が押しかけ、Aさんは力づくで両脇を固められ、胸等を叩かれた上、居室から引っ張り出されてしまった。そのためAさんは途中で意識を失ってしまったという。その上、職員らはAさんが嫌がり抵抗したことを「暴力をふるった」とみなし、“懲罰”を与えた。収容された単独室にベッドや布団はなく、毛布3枚のみ、(居室外での)フリータイムもなしの状態で、5日間収容された。車椅子に座っているAさんは、職員を呼ぶための室内のインターホンには手が届かず、トイレを使うときもカメラで監視されている環境だと訴えていた。Aさんに対するこの入管の対応について、「START」は「(このままでは)再発必至」と入管を糾弾している。

またこの日、被収容者の有志25人による、ウィシュマさんの死の真相解明とビデオ映像の開示を求める申入書も、「START」メンバーが代理で提出した。
 

5月17日、名古屋入管を訪れたウィシュマさんの妹、ワヨミさん(左)とポールニマさん(右)

2日後の6月4日、「START」には、Aさんの仮放免(※在留資格がないなどの事情を抱える外国人を、入管施設に収容するのではなく、外での生活を認めたもの)が、“突然”決まったとの連絡が入ったという。明らかに「真相隠蔽、責任逃れ」であると、「START」は入管の対応を批判している。

収容が解かれることで、密室での蹂躙は免れるかもしれない。ただ、外に出られても、仮放免の立場では過酷な状況が続いていく。仮放免中の人々の多くは、就労が認められず、生活保護も支給対象外、健康保険も適用されず、医師の治療を受ければ高額の医療費がのしかかる。

東京都内の厚労省記者クラブではこの日、医療支援を続ける北関東医療相談会(通称:アミーゴス)が高橋済弁護士と共に記者会見を開き、在留資格を失った状態で暮らす人々の窮状と、喫緊での医療支援の必要性を訴えた。
 

左から、髙橋弁護士、アミーゴスの長澤さん、大澤さん

国の事業としては、低所得者などに医療機関が無料または低額で診療を行う「無料低額診療事業」があるものの、同団体の事務局長、長澤正隆さんは、「無料低額診療はどこも生活困窮者で手一杯となり、外国人の診療が断られてしまうケースが目立ってきている」と指摘する。
 

一人ひとりが抱える深刻な問題を伝える長澤さん

2015年から仮放免での生活を続けている40代の女性は、2010年に進行性の卵巣がんが見つかった。腫瘍が破裂したり捻転したりすれば緊急手術となる恐れがあると診断されている。そもそも癌の確定診断を得るまでに、診療を断られるなど、10箇所以上の医療機関を転々としなければならなかったという。癌の除去手術、抗癌治療などで、推定500万円以上の医療費が必要になると見られている。収入を得る手立てはなく、アミーゴスの食糧支援などで生活をつないでいる。
 

5月、イグナチオ教会(東京・千代田区)が開催された「ゴールデンウイーク大人食堂」には、多くの外国人もお弁当の列に並んでいた。

女性は現在、在留特別許可を申請中だが、そのための「口頭審理」で入管に赴かなければならない。髙橋弁護士は「体調が思わしくないため、長時間の審理が難しいと伝えていますが、入管側は時間が必要だと主張してきています。進行性のがんなので、早急に判断にたどり着く必要がありますが、一度の長時間審理も難しく、かといって数回に分けて日数をかけるわけにもいきません。事前の書類のやりとりなどで、審理の時間をある程度短縮したケースもあります。なぜこのケースで長時間かかるのか疑問」と憤る。

こうした困難を抱えた人々からの相談が、同団体には多数寄せられている。過去には冬の厳寒期に、治療費や入院費が払えないことを理由に、下着一枚の状態で病院の外に連れ出されてしまい、その数日後に息を引き取ったケースもあったという。

アミーゴスも支援をしていたカメルーン出身のレリンディス・マイさんは、二度に渡る入管への収容中、腹部や胸部の痛みを訴えたものの適切な医療を受けられず、仮放免中もホームレス状態に陥るなど生活苦が続いていた。そして今年1月23日、癌が全身に転移し息を引き取った。「在留カード」が届いたのは、マイさんが亡くなった3時間後のことだったという。

アミーゴススタッフの大澤優真さんは、「これ以上の犠牲者を出してはいけない。国あるいは入管には、外国人に人権はない、“煮ても焼いても自由”というメンタリティ、意識があるのでは」と指摘した。
 

生活に困窮する人々から届いてきた切実な声について語る大澤さん

入管内での人権侵害や、仮放免中の過酷な環境に見られるように、在留資格を失った状態の人々の身には、何が起きてもいいかのような措置が続いてきた。

長澤さんは「在留資格の有無が、“健康”のボーダーになってしまっている状態。これは入管庁の大きな間違いだ」と強く指摘する。髙橋弁護士も「在留資格があろうがなかろうが、治療を受けられない、生きられない理由にはならないはず」と、改めて訴えた。

アミーゴスでは現在、以下の口座で支援を募っている。
 

ゆうちょ銀行 当座預金:アミーゴ・北関東医療相談会
記号:00150-9-374623

(通信欄には「仮放免者への寄付」と記入)

※問合せはアミーゴス事務局へお願い致します。>>リンク

 

(2021.6.7/ 写真・文 安田菜津紀)

 


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2021.6.7

取材レポート #収容問題 #人権 #法律(改正) #安田菜津紀