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関係性を破綻させる監理措置制度、支援者の拘束を可能にする制止等の措置―入管法はどう変わるのか(高橋済さんインタビュー)

2023年6月、人道上の問題が指摘されながらも、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改定案が可決されました。さらに今国会で審議中の法案には「永住権の取消」が盛り込まれ、様々な形で日本に滞在する人々から不安の声があがっています。

6月から施行される「監理措置制度」や3回目の難民申請中の強制送還、そして司法の介在なく無期限収容が可能となってしまう体制は放置されたままである点など、入管法を取り巻く問題は山積みです。

本来あるべき法制度は何か、先日、控訴審判決が出た、カメルーン人男性の収容中死亡事件や、ウィシュマ・サンダマリさん死亡事件などで弁護団を務める、弁護士の高橋済さんと一緒に考えていきます。

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高橋済さん(本人提供)

公園の川を越えられない?仮放免の子どもたち

――高橋さんには新刊書籍『それはわたしが外国人だから?―日本の入管で起こっていること』(著 安田菜津紀 絵・文 金井真紀)で法監修を担当していただきました。この本の最初に書かせてもらったのが、ガーナ出身のご両親のもとに生まれ、仮放免(※)となったリアナさんのお話です。仮放免の方には、許可なく県境を越えてはならないという制限があり、リアナさんが子どもの頃、よく遊んでいた公園の中を流れている小川が、ちょうど県境になっていたため、友だちは鬼ごっこをしながら当たり前のようにその小川を越えるけれども、自分は越えられなかった、と語っています。

全く不要な規制だと思いますし、国籍にかかわらず、公園でたまたま小川を越えたら、県を越えているから収容・拘束する理由になってしまう、そういう条件・ルール自体が間違っていると思います。

入管は最近、この越県についての許可自体をすごく厳格にしているという報告も上がっています。

※仮放免:在留資格がないなどの事情を抱える外国人を、入管施設に収容するのではなく、その外での生活を認める措置

――リアナさんが入管の職員に「帰れって言われても、私はどこに行けばいいんですか?」と言うと、職員は「いや、ガーナでしょ」と。「でも、私は日本で生まれて日本で育ってきたんですよ」と伝えても、「それは分かってる。でもあなたの”血”が向こうにあるでしょう」と言われてしまったそうです。入管職員からこうした尊厳を踏みにじられるような発言を受けることは、日常茶飯事化してしまっているのでしょうか。

よく聞きますね。入管職員がクルドのお子さんに、「君、もう勉強頑張っても無駄だよ」、「進学もできないし、将来働けないし、もう日本から帰ってもらうから」と言ったり、あるいはスポーツで部活を頑張っているお子さんが、「サッカー選手なんか日本ではなれないよ。君はもう帰らなきゃいけないんだから」と言われた、などですね。

仮放免のお子さんは16歳以上になると、自分自身も入管に行かないといけなくなるので、この手の「帰すために入管職員が子どもの心を折る」みたいなことは、高校生以上になると、本当に枚挙にいとまがないです。許し難いです。

助けを求めても放置され、死亡したカメルーン人男性

――高橋さんも弁護団の一員である、カメルーン人男性が2014年に牛久の入管施設で亡くなった事件の控訴審判決が、先日(2024年5月16日)出ました。

この方はまず、成田の空港で入国できず、そのまま牛久の収容施設に入れられて、亡くなる1ヶ月くらい前から体調が悪くなり、亡くなる12時間前、3月29日午後7時くらいから体調が急変しました。

それにもかかわらず、入管では適切な措置がなされず、救急車も呼ばない、何の対応もしない状態が続き、最終的に翌朝2014年3月30日午前7時頃に心肺停止であることに職員が気がつき、午前8時に医師によって亡くなっていることが確認されたという事件です。

―――証拠として提出された、入管の監視カメラ映像は、男性が床でのたうち回って、「死にそうだ」「水、水」と訴えているものでした。

のたうち回るぐらいの苦しみを訴える男性が12時間以上放置され、死亡に至りました。水戸地裁は、遅くとも男性が死亡する前夜の段階(3月29日午後7時35分の時点)で、入管には救急搬送を要請しなければいけない注意義務があったのに、これを怠ったとして、計165万円の賠償命令が出ました。


――一方、入管が救急車を呼ばなかったから亡くなったとまでは認められず、高裁では双方の控訴が棄却されて、一審の判決が維持されました。

その点は極めて残念です。前日午後7時35分の時点で国側が救急搬送していたとしても、この方が助かったとまでは言えないとの判断です。国側の救急搬送義務はもっと早い時点であったでしょうし、妥当だとは思っていません。

ただ、収容中のこうした死亡事件に関して、救急搬送しなかったということで国の責任を認めたのはこの事件が初めてです。

※2007年以降だけでも、入管施設内での死亡事件は、その後の事件も含めて18件起こっているが、民事とはいえ国の責任を認めた判決は本件が初めてとなる。

これだけ多数の方が亡くなっていて、そもそもご遺族等がいないと、裁判を起こして責任追及することができないということもありますが、はじめて入管側、国側の責任を認めたという意味では、画期的な判決だと思います。また、それを東京高裁が維持したことも、よく捉えれば、今後につながる判決だと思います。

――救急車を呼ばなかった入管側ではなく、遺族側、原告側に立証責任が求められる今の構造自体は、変えていく必要があるのではないでしょうか。

たとえば病院であれば、カルテなど様々な記録が残されているので、立証も事細かに判断すればいいですが、収容施設の中に閉じ込められている場合、そういった記録にしても監視カメラなどの映像記録がメインになってしまいます。

つまり刻一刻と変わる体調に関する医学的な記録がない状態なので、病院での医療過誤の事件と同じ立証方法で因果関係を判断するということにしてしまうと、今後もなかなか難しい。そこについては裁判所にも考えていただく必要があると思っています。

2024年5月18日、永住資格取消を含めた入管法改定に反対する議員会館前のシットインで

――もう一点、賠償額について、カメルーンの経済事情を考慮して安くする、ということがあってはならないという趣旨の主張を原告はしていましたが、判決では、そうした算出の仕方が差別にあたらないとされました。

この点はずっと古くから言われていて、結論から言うと誤りであると思いますし、端的に差別だと思います。たとえば、カメルーンで今この瞬間に生まれた子と日本で生まれた子で、成長していく中で傷つけられたり殴られたりした時に感じる痛みは完全に同じだと思います。

裁判所の理屈の背景には、その国に帰ってお金を使って心を慰謝するのだから、その国の物価が安い分、慰謝料額も安くてもいいという考えがあります。

そもそも金銭で亡くなったことを評価すること自体が困難であるにもかかわらず、さらにそれを安くするというのは非常に問題だと思いますし、必ずいつかは日本社会が(最高裁判所も含めて)、見直さないといけないと思っています。

――この裁判に関しては、約35時間分のビデオが出てきたことで、ここまで裁判を進めてこられた面があったと思いますが、ウィシュマ・サンダマリさんの裁判では、ビデオは約5時間分しか提出されていません。

税金で運営されてる収容施設で、こういうことが起こった時のためにビデオを撮っているのに、裁判になった時には自分たちに有利なら出すが、不利だったら出さない、というやり方です。

有利不利問わず、事実が何だったのかを明らかにしなければ、責任の所在も分かりませんし、彼らがもし本当に再出発したいのであれば、真摯な反省と原因の究明は必要です。いずれにしてもビデオを全面開示するべきだと思います。

――今回の裁判の中では、書面をめぐってすぐに答えられそうな質問に対して、逐一引き延ばしてくるような国の姿勢がありました。

書面に書いてある内容が、過去のものと矛盾していて、医師が検査結果をしっかり見たのか見ていなかったのかという根幹に関わる話でした。彼らはその点について、ずっとはぐらかしてきたわけですが、最近になって見ていたかのような矛盾する話をしています。

※ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなる前月の2月15日に行われた尿検査の結果が、飢餓状態を示すような数値だったことに関して、入管内の庁内医師は、3日後の2月18日にその検査結果を見たかどうか、記憶が定かではないとしてきた。その後出してきた書面では、「(尿検査の結果を受けて)総合的に考慮し、確定診断をするために精神科につなげるという判断をしたと推察される」とあった。

見ていたことを思い出したのか、どういうことなのかよく分からないので、その点も含めて答えてほしいという話で、それは従前、国側は自分の主張の意味について問われただけなので、その点のみ迅速に回答することは可能ですし、容易なはずです。

訴訟戦略的な部分もあると思います。長引かせたり、酷いケースになると旗色が悪いから裁判官が交代するまで延ばそうとか、あるいはこの事件みたいに社会的な関心が高まっている事件はやりにくいので、できるだけ風化させるぐらい延ばしたいとか――国家賠償請求訴訟や行政訴訟で国側が取るやり方の1つと理解してます。

――ウィシュマさんの事件後、入管側から繰り返し、医療体制を改善したという報告が出てきました。しかし、去年の入管法の審議過程で提出された資料で、大阪の入管施設に常勤医が1名いるとされたその医師が、実はお酒に酔った状態で診療したり、被収容者に対する暴言の証言もあり、この資料が出されてきた時点では、既に勤務実態はなかったことがわかりました。

常勤医がいるかどうかという問題は、収容されている人が治療診察を受けられるようになっているかどうかの話なのに、実は在籍はしているが、実際には出勤は何ヶ月もしてなくて、診察はされていなかったというのです。

結局、彼らは個人の命がどうなるか、体調がどうかは心配しておらず、うまく改善したから法案を通してくださいと、それだけしか考えていない気がします。

2024年5月22日、裁判のため、名古屋地裁に入廷するウィシュマ・サンダマリさん遺族と弁護団

「監理措置制度」は支援者との関係性を破綻させる

――そもそも入管の収容施設がブラックボックス状態で、入管の強い権限で収容・解放が不透明に決められ、かつ無期限の収容が可能であるという体制の問題が残されています。6月10日には、改定入管法が全面施行されますが、これにより導入される「監理措置制度」とはどのような制度なのでしょうか。

地域社会で生活することを認めようというのが、監理措置制度の内容ですが、単に社会生活ができるというものではなく、「監理人」というお目付け役、監視する人を一人つけないといけない。その人を入管が選定します。

私たちみたいな弁護士はおそらく選ばれず、入管の御しやすい弁護士とか、あるいは何とか外に出してあげたいというご家族とか親族、支援者などが、監理人をやることになると思います。

――監理人になりたがる人がいないのではとも指摘されています。

監理人には法律上、色々な密告義務のようなものが課されます。「この人が隠れて働いて、子どものために生活費稼いでますよ」とか、あるいは「逃げそうですよ」とか、色々なことを報告しないといけない。生活の微に入り細に入り、そういう監視を私たち弁護士がやるというのは、ちょっとあり得ないです。そもそも私たちは彼らの人権擁護のために存在しているので。

みなさんだって、対等な仲間だと思っていたら、実は上司とか学校の先生に何でも言いつけるような人と、信頼関係は築けないですよね。そういう意味で、弁護士も監理人をなかなかできないと思いますし、支援者もおそらくそういった形の関係性になってしまうと、支援という関係が歪むと思います。ただでさえ、支援する側とされる側というのは、上下関係や権力関係ができやすいものです。さらにお目付け役として密告するとなると、本来あるべき関係性は破綻してしまうと思います。

――たとえば入管の外に出てきた被監理人が自分や家族の命をつなぐためにこっそり働いていることについて、監理人が気がつき、入管にそれを伝えなかった場合、罰の対象になるのでしょうか?

「過料10万円」という制裁がしっかりあるので、それを言わなければいけない。さらに働いた人にも、新たに不法就労罪のような重い刑事罰が科せられるので、その意味でも非常に非人道的だと思います。

支援者も拘束できる「制止等の措置」

――全面施行される改定入管法は、他にも多くの問題が指摘されています。

やはり3回以上難民申請をしている人の強制送還ですね。独裁国家などで命の危険があって日本に逃げてきた人たちを、場合によっては強制送還できてしまうという制度になってしまい、それは取り返しがつかないと思います。

――「制止等の措置」(改定入管法55条51Ⅱ)では、たとえば支援者など、収容されている人以外の人のことも、入管の職務執行を妨げていると判断した時、拘束できるという規定があります。

様々な支援者などが人権侵害に対して声を上げるという場面において、入管の建物にいるだけでも、退去しないから、と拘束できるという条文があります。その拘束には裁判所の令状もいらないですし、いつまで拘束するかについても、特段法律を見ると決まっていないものです。

今、声を上げる人たちが増えていっているので、それを簡単に拘束したり、排除したりできるようにするルールなんだと思います。

――その上また今年、入管法を変える法案が提出され、今度は永住資格の取り消しが盛り込まれています。どのような場合に取り消される恐れがあるのでしょうか?

税金や社会保険料を故意に滞納、支払えなかった場合が1つ目のパターンです。もう1つは、入管法上のあらゆる義務違反です。在留カードを携帯するなど、細かいそれらの一つでも義務違反を起こした場合は取り消せることになっています。

恐ろしいのは、在留カードを持っていなかった事情や経緯は問わずに取り消せるということです。入管の胸先三寸の世界になってしまうので、いかに彼らが国会で「そういう小さい場合は取り消しません」と答弁しても、法律上できることになっている以上、何の担保にもなりません。

そもそも、世界にいる日本国籍のない外国人は、別に日本社会を支えるために生まれて、生きているわけではありません。それでも日本社会側が彼らを必要として、(日本政府の言う)「選ばれる国」になりたいのであれば、人間として安定して暮らせるような制度設計をしないといけないはずです。ところが安定して暮らせる唯一の在留資格と言ってもいい永住資格を、家を出る時に財布を忘れて在留カードが入っていなかったというようなことで取り消せるような制度を作り、でも「日本社会は困っているので、ぜひ皆さん来てください」というのは、大いなる矛盾をはらんでいる政策だと思いますね。

――稲田朋美議員は入管法の審議中、「外国人労働者の受け入れは国益に有利な場合は検討すべきだが、日本の良さや地域の絆、地域社会の絆、国柄を壊す恐れもあるので、バランスを考えて欲しい」と発言しています。

私たちは国家とか国益のために生まれて、国益のために働いているわけではなく、それは外国人も同じです。外国人は年齢問わず性別問わず、すべからく、日本を支えるために存在しているわけでもありません。ですので、国益だけを考えるその発想自体を捨てていかないと、うまくいかないと思います。

「国柄を壊す」とか、日本の良さみたいなものを失わせる存在という風に、外国人を「破壊者」として位置づけていることについてもどうかと思います。もちろん色々な違いがあることも事実ですが、別にゴミの出し方が分からないなら、ゴミの出し方を伝えればいい話で、そこは本質的な問題ではないと思います。一方で、外国人が本国の料理を毎日おうちで食べるのを禁止する必要があるのかと言われると、それはないと思うんですよね。

また、出身国には罰則がないものが日本では罰則がある、という場合もあり、そうしたことは伝える必要があると思う一方、そういう刑罰法令などに関わらないものは、彼ら個人にも自由があって、自由なままやってもらえばよいと思います。日本国籍を持っている者同士だって、守ってもらわないといけないことと、干渉してはいけないことがあるので、それは同じだと思います。

たとえば、僕が今日の夜は韓国料理が食べたいなと思うのを、保守的な人に「それは日本社会を壊すから食べるな」と言われる筋合いはないですよね。あるいは僕が今日、友達で日本国籍のない人と飲みに行こうが、別に誰かに迷惑をかけているわけでもないですし、日本の国柄を壊しているとも私は思わないです。

――スローガンとして「共生」が謳われますが、法律的にはそれと逆行するような改定がなされていく今、共生社会を本当に実現するにはどんなことが必要でしょうか?

法律は結局、その社会の多くの人の認識をどうしても反映せざるを得ないもので、やはり日本社会の中で生きている個々人の認識が重要だと思っています。

日本社会が同じような属性で固まりがちなのは事実だと思います。それがゆえに、外国人はきっとこうなんじゃないかという思い込みを持ってしまう。私は無意識の「内なる差別心」と呼んでいます。外国人の事件をたくさん担当している私ですら、内なる自己の差別心に直面する瞬間があります。

私は、そういった内なる差別心を無意識に持ってしまっていること自体は、止むを得ないところもあると思っていて、重要なことは、その内なる差別心に気づいた後に、「自分」がどうするのかです。自分の内なる差別心に気づいた後に、その差別を開きなおり、大手を振って受け入れて、正当化していってしまうのか。私はそれこそが、最も非難されるべきことだと思います。

どうやってアップデートしていけるか、内なる差別心から離れていけるのか。それが一人ひとりに問われていると思いますし、法律だけの問題ではないと思います。

※本記事は2024年5月22日に配信したRadio Dialogue「入管法はどう変えられようとしているのか?」を元に編集したものです。

(2024.6.3 / 聞き手 安田菜津紀、 編集 伏見和子)

【プロフィール】
高橋済(たかはし・わたる)(弁護士)

1979年生まれ、東京弁護士会外国人の権利に関する委員会・元委員長、ウィシュマサンダマリさん収容中死亡事件、チャーター機送還違憲判決、カメルーン人男性の収容中死亡事件などの弁護団のメンバーです。また、入管法という制度そのものにも疑問を持ち、あるべき入管法についても関心があります。「実務解説行政訴訟」(共著)など。

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