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Reports

2021.11.9

「疾患とともに見せる世界」 林すいかさん(仮名・49) D4Pメディア発信者集中講座2021課題作品 橋本啓吾

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2021.11.9

#media2021

「疾患とともに見せる世界」
林すいかさん(仮名・49)

後ろ姿 提供:林すいか

20代で結婚をし、2人の子供を育ててきた、林すいかさん(仮名・49)。30年以上追いかけている音楽グループがあり、ライブにもよく足を運ぶ。そんな彼女は「リンパ管腫」という疾患をもって生まれた。生活が落ち着いてきた2009年以来、恩人・荻田先生や周囲の人たちからの言葉が後押しとなりながら、「しんどい人たち」に向けて心のどこかに引っかかるきっかけとなるような交流の場を提供し続けている。

リンパ管腫は、リンパ管の先天的な形成異常とされる疾患だが、詳しい原因はまだ分かっていない。 主に小児(多くは先天性)に発生する。全身どこにでも発生しうるが、特に頭頚部(とうけいぶ)や腋窩(えきか)に好発する。治療としては、硬化療法や外科的切除等が可能である。しかし、重症例はしばしば治療困難であり、気道閉塞などの機能的な問題や腫れがあることに伴う美容的な問題が残る。

林さんは2歳の夏、突然瞼が腫れて目が開かなくなり病院へ行った。そこでリンパ管腫と診断された。神経と病変組織が絡んでいることがあるこの病気。彼女の両親は不安になったが、当時診断してくれた医師は「命が危ぶまれたときに治療しても遅くない」と親身になってくれたそうだ。その間にリンパ管腫に関する研究は進み、新しい治療法も登場する。林さんはその治療を20歳前後で受け、左頬・左目にあった腫瘤はかなり小さくなった。現在は疼痛治療など具合が悪くなったときにその対処をする程度だ。

新しい治療法とは、特効薬ピシバニールを用いた硬化療法のこと。この方法を開始させたのが、外科医・荻田修平医師であり、林さんの治療も担当した。「研究の成果を病に苦しむ全ての人々が享受できるように努力しなければならない」という信念のもとで、特効薬の入手が困難な海外の患者らに対する支援も行ってきた人。ある時、林さんはそんな荻田先生から「患者さんをまとめるような活動を考えてほしい」と言われたそうだ。2003年に荻田先生は55歳という若さで亡くなった。その七回忌のタイミングで自身の生活が落ち着いてきたこともあり、リンパ管腫当事者として自分のことを出していこうと行動を始めた。

管理サイト『Naturally ~リンパ管疾患をもつ当事者と家族のページ』

これまでにブログサービス「アメーバブログ(以下、アメブロ)」や自身運営のホームページ、SNS「Twitter」等を通して様々な当事者や当事者の保護者と接してきた。何か相談を受けた際は、「こんな人もおるで」と結婚や妊娠・出産を経験してきた自身の例や、他の方の生き方を示しながら励ましてきた。時には一緒に泣くこともあった。「子どもがいじめを受け、不登校や鬱、自傷行為を経験している中で、それに気がついた親御さんの悲鳴をたくさん聞いてきた」。これまでの働きかけは、「そのような子どもや家族の心のどこかに引っかかって、原動力になってほしい」という願いが込められている。

最近はTwitterの新機能である音声コミュニティ「Spaces(スペース)」を利用し、新しい交流を始めた。定期的に開かれており、アメブロでの知り合いや新しく興味を持ってくれた人たちが集う。「最近どう?」という話題から治療法についてなど、テーマを決めないことで開放的な場所となっている。3回程ここに参加している20代女性は「病気を持っているのは自分だけじゃないという安心感を得ることができた。同じ病気を持つ人がどう日常生活を送っているのかが分かることや、その人の談笑している声を聴くことに意義を感じる」と答える。

7月5日には、東京2020オリンピックの聖火ランナーを務めることになったリンパ管腫当事者・中島勅人さん(46)を応援するためにSpaces(スペース)で配信を行った。中島さんは〈この経験を次の世代に還元したい〉という思いを持っていて、このリレーも「誰かがリンパ管腫を知るきっかけになれば」と意気込みながらエントリーしたという。マラソンを始めたときから漠然と憧れていた舞台。そんな中島さんの姿を「一緒に見届けよう」と林さんが呼びかけ、7人がオンライン上で一緒に声援を送った。仲間たちが応援していることをメッセンジャーアプリ「LINE」で目にしながら、中島さんは200メートルという「あっという間」の時間を過ごしたそうだ。

日常では、子育てをしながら、好きなバンド「爆風スランプ」やそのメンバー・サンプラザ中野くんを追いかける日々を過ごす。そこから元気をもらうことで、誰かが立ち寄りたいときのための場所を築くことへの原動力となっている。「それが私なりの生き方だ」と林さんは語る。


「第5回梅小路フェス!Do You KYOTO?」でのサンプラザ中野くん 撮影:林すいか

(橋本啓吾)

『「疾患とともに見せる世界」 林すいかさん(仮名・49)』

    ここでは「社会に一歩を踏み出す人」として林すいかさん(仮名)を取り上げた。彼女は「リンパ管腫」という疾患を抱えていて、だからこそ様々な出会いがあった。そんな林さんの過去のご経験やそもそも「リンパ管腫」とは何かについて、文章と画像で詳細に記した。読者には、そのパワフルさを通して“普通”って何だろうと考えるきっかけにしてほしい。またこの作品が新たな気づきとなり、他の誰かも社会に一歩を踏み出してくれることを願う。

 

    • ▶︎形式:文章と画像
    ▶︎対象:”普通”ってなんだろうと考えている方、現状から一歩を踏み出そうとしている方、社会に一歩を踏み出している方、何かの困難に直面している方、全世代

 


 

    こちらは、D4Pメディア発信者集中講座2021の参加者課題作品です。全国各地から参加した若者世代(18~25歳)に講座の締めくくりとして、自身の気になるテーマについて、それを他者に伝える作品を提出していただきました。
     

 
 

2021.11.9

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