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Reports

2021.11.9

D4Pメディア発信者集中講座2021講座レポート 金子祥子

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2021.11.9

#media2021

 私がこの講座を受講しようと思ったのは、「人を傷つけない報道の仕方」を知るためだった。「悩もう、探ろう」という考えより先に、誰かが一つの答えを与えてくれるのではないかと考えていた節があったように思う。講座を通して、登壇者の話を聞き他の受講者と対話をして、その考え方が非常に傲慢なものであったことを実感している。誰かが答えを与えてくれることを期待するのは、自分の思考を止めること、そして人と真摯に向き合う姿勢を追求しないことにつながるとわかったからだ。

 性暴力報道についてお話しくださった山本潤さんの講義では、記者が意図なく取材対象者を傷つける可能性に深く考えさせられた。勇気を出して声をあげ、ひとたび世間に注目されれば記者が何人も回ってきて過去の記憶を掘り起こされる。その中には勉強不足の記者もいれば横柄な態度をとる記者もいる。その態度は大問題で、被害者をさらに傷つけ、かつ本当に取材をしたい記者と被害者の距離を遠くさせると思うからだ。私は記者が「社会に問題提起をしたい」と思う心情もわかるので、話を聞きながら頭がパンクしそうになっていた。「寄り添う」とは何なのか、なにが「寄り添う」なのかがわからなくなった。ただ一つ言えることは、被害を受けた方一人一人が今どのような思いでいるのかはその都度意識しなければならない。つまり、どのように接するかは人それぞれ異なるということだ。答えがないのは当たり前ということを知った。
 また、「レイプ神話」についても考えさせられるものがあった。レイプと聞くと、見知らぬ人から夜道で襲われるなどを想像しやすい状況は未だに残っているだろう。「抵抗しなかった者が悪い」という理論は加害者の残虐性を見えなくし、女性蔑視的視点を含む。私は、被災地で起きた性暴力や DV 被害について調べたことがある。当時は全く知らない情報で、混乱しながらインターネットで検索をかけたのを覚えている。被災地での性暴力は、最初はフェイクとして処理されたり民族差別(「在日外国人が加害者だ」などという言説)に利用されたりした。何年も経ってやっと検証され始めてきたが、なぜここまで被害者の声が届かないのか、現在でももどかしく感じることが多い。メディアも変わろうとしているが、息長く報道し続けなければまた同じことが繰り返される。そうならないためにも、私にどういった報道ができるのかを考え続けたい。

 伝え方にも多様さがある。伊藤詩織さんの、耳が聞こえない役者を取材しドキュメンタリーを作成した話が印象に残っている。「かわいそう」というストーリーに当てはめるのではなく、前向きに生きていることを映像として撮られ作品になってよかったと言われたという話だ。問題提起、社会の矛盾を問うために撮りたいストーリーに当てはめることが本当に彼らの声を届けることになるのかを考えさせられたお話だった。

 今後メディアで働くことになったとき、自分の伝えたいテーマをどのように切り取るのか葛藤は尽きないと思う。今回は取材をすることはできなかったが、講座で学んだり考えたりしたことは今後確実に生かせるものであると断言できる。登壇者も悩み葛藤しながら取材活動をしていることをひしひしと感じることができた。おこがましいかもしれないが、何か心強く思うものがある。たったの4回でここまで実りある講座を受講させていただいたことに感謝したい。

(金子祥子)


    こちらは、D4Pメディア発信者集中講座2021の参加者課題作品です。全国各地から参加した若者世代(18~25歳)に講座の締めくくりとして、自身の気になるテーマについて、それを他者に伝える作品を提出していただきました。
     

 
 

2021.11.9

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