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【取材レポート】伊藤詩織さん意見陳述全文 ー安心して道を歩ける日常をー

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、Twitter上で虚偽の内容により中傷を受けたとして、大澤昇平氏(元東大特任准教授、株式会社Daisy社長)に対し、110万円の損害賠償と投稿の削除を求めている裁判の第六回弁論が2021年4月20日、東京地裁で開かれ、結審した。請求棄却を求めている被告の大澤氏はこの日、出廷せず、代理人も取材には応じなかった。

訴状によると、2020年6月、伊藤さんが漫画家のはすみとしこ氏ら3人を提訴後、大澤氏は「伊藤詩織」を通名とする外国人とみられる人物が破産に至ったことを示す官報公告の画像と共に、「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」とツイート。伊藤さん側は、破産開始決定を受けたことはなく、自身の名前も本名であり、ツイートの内容が真実ではないことを指摘していた。

以下、伊藤さんの意見陳述要旨の全文を掲載する。

意見陳述要旨

新型コロナウイルス感染症でこれまでの日常がガラリと変わり、ネットを通し日々の仕事や生活をこなすようになって、1年以上が経ちました。

今やネットは誰もが避けて通れない、私たちの通勤路のようなものになりました。しかし私はその通勤路を通ることが、拡散され、蓄積されていく誹謗中傷により、難しくなりました。いくら目を瞑ればいいと言われても、その消えない言葉たちは私を道角で突然、襲います。

情報を扱う、伝えるという仕事をする私にとって、Twitterは情報を得たるために大切なツールです。でも私は1人ではTwitterにログインすることすらできなくなってしまいました。

大澤氏が発信した私に対する真実ではない情報や、誹謗中傷は瞬く間に拡散されていきました。

いつの間にかネットは私にとって、顔が見えない人から突然、尊厳を傷付けられる暴力的な場所になっていました。顔が見えないということは恐ろしいことです。その無数に拡散されていく、言葉を誰が発信して、誰が見ているのかわからないと、実際の道ゆく人がその1人かもしれないという恐怖に襲われるからです。

幸いなことに、私はまだ道端で誹謗中傷されたり、暴力を振るわれたことはありません。しかし、このネット上での誹謗中傷は私をどんどん追い詰めていきます。このような行為は、実際に顔が見えなかったとしても言葉の集合体として襲いかかってきた時、誰かを殺してしまうことがあります。

今は必死にそのリスクを回避するために、メールやメッセージ、Twitterなどのオンライン上でのコミュニケーションは、主に第三者に任せています。

何も恐れずに、ネット上で仕事を再開できることを望んでいます。恐怖を感じることなく安心して、道を歩ける日常を望んでいます。

2021(令和3)年4月20日
伊藤 詩織

 (2021.4.20 / 写真・文 安田菜津紀)


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