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ルーツを巡る旅、韓国から帰国のご報告

date2022.10.3

writer安田菜津紀

categoryエッセイ

9月15日からはじまった韓国取材を終え、日本に帰国しました。支えて下さったみなさま、滞在中お世話になったみなさま、改めてありがとうございました。

これまで記してきたように、私が中学2年生の時に亡くなった父は、家族の歩みの一切を語らなかった人でした。父が在日コリアン2世だと知ったのは、死後に戸籍を見てからです。

もうひとつの「遺書」、外国人登録原票
https://d4p.world/news/8032/

詳細はまた追って書きたいと思いますが、多くの方の協力の元、今回の滞在で、父のいとこにあたる人たち、私のはとこたちに出会うことができました。ずっと謎につつまれた父のルーツを少しずつでもたどることで、自分の命の原点が見えてきたように思います。

私の両脇がはとこたち、その前に座っているのが父のいとこ夫妻

その一方で、祖母の足取りはつかめないままです。

祖母、金玉子(キム・オッチャ)は11歳の時、釜山から山口県下関市に渡り、32才でこの世を去ったと記録されています。釜山の住所地の役所を回っても、それらしき人の痕跡は見つけられませんでした。

外国人登録原票に残る祖母の写真

少しでも手がかりをつかもうと、周辺で年配の方に聞き込みも重ねました。その時に出会った、ひとりの男性の言葉が忘れられずにいます。

「金玉子? 名前で呼ばれても分からないな。女性を名前では呼ばないから」

祖母の記録がなぜたどれないのかは分かりません。ただ、族譜から墓石に刻まれる名に至るまで、女性たちの歴史が覆われてきたのはなぜだろうか――私の中に、もやもやとした感情が渦巻いています。

祖母の住所地近くで、「きっと見つかるわよ」と背中を押してくれたハルモニたち

だからこそ、殆ど痕跡が残されていない祖母が、確かにひとりの人として生きていた証を、少しでもつかみたいと思っていました。彼女は何に喜びを感じ、何に悲しみ、どんな思いを抱きながら短い生涯を閉じたのでしょうか。

祖母の住所地周辺。古い町並みも変わりつつある

家父長制はじめ、女性たちの声が抑えつけられたり、かき消されたりしてきた社会構造は、遠い昔の話ではありません。それは現代の女性差別や、日常の中で受けるマンスプレイング、それが傍観され、見過ごされる痛みと一本の線でつながっているのだと思います。

それを受け流してしまえば、ヘイトスピーチや他の差別の問題に対し、何ら説得力ある言葉を紡げないでしょう。

朝、釜山の港で

今回の滞在で見聞きしたこと、感じたことについては、改めて言葉にしたいと思います。

引き続き、祖母の情報を求めています。過去の祖母についての記事はこちらです。

探しています、祖母の生きた証を
https://d4p.world/news/8397/

(2022年10月3日 / 写真・文 安田菜津紀)



あわせて読みたい -安田菜津紀の「ルーツを巡る旅」はこうして始まりました-

「ルーツを巡る旅」のきっかけについては
もうひとつの「遺書」、外国人登録原票[2020.12.13/安田菜津紀]

ウトロ地区の取材と韓国渡航前の思いについては
「ルーツを巡る旅」、ウトロから海をこえて[2022.9.7/安田菜津紀]

現地、韓国・済州島で取材した「4・3事件」については
虐殺とタブー視、それは「遠い過去」なのか ――韓国・済州島の記憶 [2022.9.26/安田菜津紀]

▼祖父母に関する情報を集めています。詳細はこちらの記事にも書いています。

・探しています、祖母の生きた証を
・韓国の親せきを探しています(取材にかかる情報提供のお願い)


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