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「ただ生活しているだけでは、国家ぐるみのレイシズムと暴力の片棒を担がされる」―入管法に反対する国会前集会で、高橋一が伝えたかったこと

5月12日夜、反貧困ネットワーク、# FREEUSHIKU、Save Immigrants Osaka、Voice Up Japan、REBEL FOR THE FUTUREの呼びかけで、「入管法の改悪に反対する大集会」が国会前で開かれた。現在、審議中の入管法政府案に対し、4000人以上の参加者が集い、「NO」の声をあげた。

この法案がどのような人道上の問題を抱えているのかは、この記事にまとめているが、人の生き死にまで左右するものが、あまりに杜撰な立法事実と審議で推し進められているのが現状だ。

集会のステージ上ではリレートークが行われ、8人組ソウルバンド、思い出野郎Aチームのフロントパーソン、高橋一さんも登壇した。バンドがこれまで発表してきた楽曲には、レイシズムに毅然と抗う歌詞も綴られている。

手弁当で奔走する呼びかけ団体の一人が声をかけ、この登壇が実現したという。

公の場で誰かが政治や社会課題に対して声をあげると、中傷や冷笑が跳ね返ってくることが少なくない。「なぜアーティストが政治に口を出すのか」という的外れな言葉も混じる。

髙橋さんのスピーチは、不条理なものに対して「おかしい」と言うことが「リスク」になりえる社会そのものに、警鐘を鳴らしていたように私には感じられた。

下記に、その全文を掲載する。

国会前でスピーチする高橋一さん

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こんばんは、初めまして。多くの方がご存知ないかと思うんですが、思い出野郎Aチームというバンドをやってます。売れないミュージシャンの高橋一です。よろしくお願いします。

今日このお話を頂いて、最初、僕のような人間よりも、もっと難民の当事者の方に多く語って頂いた方がいいんじゃないかと思って、悩んだんですけど、でも、もう一度思い直して――この今起こってる、入管だったり、この国が抱えてる差別や暴力の問題の当事者って誰なんでしょうか。当事者じゃない人っているんでしょうか。

先ほど西山さん(西山温子弁護士)も言ってましたが、この問題を起こしてるのはなにも、宇宙からやってきた謎の組織じゃないんです。我々が参加した選挙で選ばれた、俺たちの代理人であり代表である人間たちが進めている問題です。だから俺たちが止めなければいけない。そういう責任があると思って――今僕は37歳で、両親も日本人で、結婚して子どももいる。要するに超一般的な、特権性を持つマジョリティ男性なんですけど、こういう僕みたいな人間に責任があると思ってます。俺たちはこういう問題を一刻も早く止める責任がある。

ウィシュマさんをはじめ、入管で命を奪われてしまった人たちのニュースを見たときに、強い後悔に襲われました。なぜならどの方も、我々が救えた命だからです。

あのときもっと、仕事とか休んで、このデモに参加していたら。今日来て頂いたみなさんのように、もっと声をあげていたら。SNSでもっと発言していたら。一番動員があったステージでもっとこのことを訴えていたら。ここに今、ウィシュマさんや、亡くなってしまった方々が立って、僕なんかよりももっと、我々が聞かなきゃいけない言葉を届けてくれていたんじゃないでしょうか。

我々が救えた命を、僕は、見捨ててしまったと思っています。そしてこの後悔はもう、一生消えることはないでしょう。だけど、だからこそ、もういい加減こういった問題を我々で止める必要があると思います。

残念ながらこの国では、ただ生活しているだけでは、国家ぐるみのレイシズムと暴力の片棒を担がされる。

みなさんのように、こうやって実際行動に移してこの問題と闘うのか。差別と暴力の奴隷になるのか。その二択しかないんじゃないでしょうか。

そして後者を選べば、われわれは仮初(かりそめ)の平和な、穏やかな人生を歩めるかもしれない。だけどそんなものに何の価値があるんでしょうか。

何の罪もない隣人の苦しみを差し置いて、幸福になれる道などあるのでしょうか。

先ほど皆さんも話していましたが、この問題は必ず我々が止められるものだと思っています。

僕の娘は今七ヶ月なんですけど、僕には、娘がもっと育ったときに、人種や国境に関係なく、様々な人たちともっと自由で平等な社会で豊かな人生を送っている、そういう娘の姿がありありと思い浮かべることができます。

必ずこの問題は終わらせることができる。そして、この問題を終わらせるのは、他でもなく我々です。

僕は全然売れないミュージシャンではありますが、まだステージやCDなど、そういった機会を与えて頂いてるので、自分のやれるところで闘いたいと思います。

みなさんもそれぞれ自分の場所で、諦めずに闘いましょう!

ありがとうございました!

思い出野郎Aチーム
高橋一

(2023.5.16 / 写真・文 安田菜津紀)

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