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熊本地震でも広がる差別デマ―公的機関にはヘイト扇動を否定する義務がある

差別や排外主義の根絶と多民族・多文化共生社会の実現を目指す11団体が立ち上げた「ヘイトにNO!全国キャンペーン」は、2026年7月28日、参議院議員会館にて「第1次キャンペーン」の成果と今後の取り組みに関する記者会見を行った。本会見では、約半年の活動で寄せられた20万筆を超える署名の成果が報告されたほか、公的機関による「官製ヘイト」への危機感、そして地域社会と連携した今後の差別反対運動の展望が語られた。
「今回の報告に『第1次』と名付けたのは、活動をここで終わらせず、今後も継続していく決意を示したからです」
移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)共同代表の鳥井一平さんはそう語る。その背景には、今なお続く行政や制度による排外的な「官製ヘイト」への、強い問題意識があるという。在留資格の更新はより厳しくなり、日本育ちの子どもたちが突然外国へ「帰国」を余儀なくされるなど、当事者家族の不安は限界に達している。
フォーラム平和・人権・環境 共同代表の染裕之さんは、「経済の低成長や人口減少、賃金が上がらないといった日本社会の閉塞感の中で、マイノリティあるいは外国籍の方に矛先が向いてしまうような、そうした過酷な実態がある」と懸念を示した。
外国人人権法連絡会事務局長で弁護士の師岡康子さんは、外国人の増加によって「治安・秩序が乱れる」という不安を抱える人々の割合が、2025年度には73%にのぼったという調査結果に触れながら、「外国人が増えても治安状況、外国人による犯罪はむしろ逆に割合が減っているというのは数字で明らかです。それが全然伝わっていないということが、やはり大きな問題だと思います」と、事実を置き去りにしたまま拡散されていくデマに対し、どのように対抗していくかが問われているとした。
また、来年4月の統一地方選に向け、ヘイト言動や差別扇動を行う議員の増加をいかに食い止めるかが課題とし、改めて実効性のある法・条例の必要性を訴えた。
また、そうした法制度の整備に加え、地域レベルで理解の輪を広げていくことの重要性にも触れた。全国に先駆け、罰則付きのヘイトスピーチ禁止条例である「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」を制定した川崎市では、新たに「選挙ヘイトをなくす川崎市民の会」が立ち上がった。同会は、選挙が人々を分断する場ではなく、互いを尊重し、ともに生きる社会への希望を育む場となることを願い、情報発信や勉強会を重ねていくという。
記者会見当日の7月28日、熊本で地震が発生し、SNS上には根拠のないデマや、外国人・外国にルーツのある人々に対する差別投稿があふれた。緊急時の不安に乗じ、特定の属性をもつ人々への恐怖や憎悪を煽る行為は、社会の分断や重大なヘイトクライムにつながりかねない。
師岡弁護士は、「災害時の差別煽動デマは、日ごろから偏見の対象となっているマイノリティへの暴力を引き起こすもので大変危険です。国や地方自治体などの公的機関は、直ちに、明白に、繰り返し差別扇動デマを否定し、非難し、社会に注意を促してほしい。それは人種差別撤廃条約及びヘイトスピーチ解消法により求められている義務です」と警鐘を鳴らす。
緊急時に煽られる差別の土台は、「日常で放置されている差別」にほかならない。制度をアップデートしていくことや、差別や人権に対する学びを社会全体で深めていく必要がある。
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フォトジャーナリスト / ライター佐藤慧Kei Sato
1982年岩手県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の代表。世界を変えるのはシステムではなく人間の精神的な成長であると信じ、紛争、貧困の問題、人間の思想とその可能性を追う。言葉と写真を駆使し、国籍−人種−宗教を超えて、人と人との心の繋がりを探求する。アフリカや中東、東ティモールなどを取材。東日本大震災以降、継続的に被災地の取材も行っている。著書に『しあわせの牛乳』(ポプラ社)、同書で第2回児童文芸ノンフィクション文学賞、『10分後に自分の世界が広がる手紙』〔全3巻〕(東洋館出版社)で第8回児童ペン賞ノンフィクション賞など受賞。
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