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寄り添う中で見える、自分の役割 Dialogue for People理事 在間文康インタビュー (弁護士)

date2020.6.17

writer佐藤慧

categoryインタビュー

メディアNPOであるDialogue for Peopleには、さまざまな分野で「伝える」活動に取り組む人々が役員として参画しています。それぞれがどのような思いを持って活動しているのか、シリーズでインタビューをお届けします。第3回は弁護士の在間文康(ざいま・ふみやす)です。

「弁護士法人空と海」提供

―弁護士を志したきっかけとは?

直接のきっかけは父が弁護士をしていたことです。子どもながらに、自分の父親の仕事は、人にとって社会にとって良きものであってほしいという思いがあり、弁護士に対する憧れから同じ道を志しました。実際に学んでいくうちに、「法」が社会の中で果たす役割についても深く関心を抱くようになりました。たとえば、もし戦前の日本の憲法が違ったものであれば、また別の歴史があったかもしれません。法というものは、私たちの社会の土台として「生きて」いるものなのだと知りました。

しかし実感を持って、日常における法の大切さというものに気づいたのは、実務を行うようになってからのことだったと思います。法律の専門家として、日常の様々な相談に応じるのが弁護士の大切な役割のひとつだと思いますが、いざ弁護士になってみると、なかなかその「役割」の認識が広がっていないことに気づきます。世の中の人々にとって「弁護士」とは、どう接点をもっていいかわからないし、どう頼っていいのかもわからない。そのような現状に触れて、「弁護士になる」ことの先に、「どんな存在になりたいか」ということを考えるようになりました。

―東日本大震災後、被災地のひとつである陸前高田に事務所を構え活動を始められました。

阪神・淡路大震災の被災経験があることもあり、発災後現地に何かできることがあれば、と思いを募らせていました。ご縁があって2012年から、「いわて三陸ひまわり基金法律事務所」を新規開設し、初代所長として執務にあたりました。

被災後の暮らしを支える各種の生活再建の支援や、災害でお亡くなりになられた方への弔慰金、そして災害関連死の問題…これらの制度や仕組みは多数あるにもかかわらず、非常に複雑で、条件によって適応状況が異なります。煩雑さから、本来受け取れるはずの支援を逃してしまうケースもしばしば見受けられました。

こうした背景から、事務所で相談業務にあたるかたわら、仮設住宅を巡回し、各種の制度を“紙芝居”をつかってわかりやすく解説する活動を行うようになりました。もともとはNPO法人難民支援協会が実施していたプログラムで、2012年より地元団体が引継ぎ、頻度や形式を変えながら現在まで一緒に取り組んできました。

NPO法人まぁむたかた 提供

活動を始めて間もない頃の、忘れられないエピソードがあります。巡回を終えて先輩弁護士と話をしているときに、「今日はどうでしたか?」と尋ねられたので、「やはり、事務所で待ってないでこちらから赴いてあげないと、きける話もきけないものですね」と答えたんです。するとその方は静かにこう言いました。

「在間さん。“行ってあげないと”ではなくて、僕らは“行かせてもらっている”んだよ」

この言葉を聴いた瞬間、自分をとても恥ずかしく思いました。そして同時に、この感覚にこそ、自分が探していた弁護士としての在り方のヒントがあるような気がしたんです。

―現在、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で猛威を振るっていますが、どのような影響を感じてますか?

私はCOVID-19のような疫病も「災害」だと思っていますが、やはり震災など、他の自然災害と共通する問題は多く見受けられます。ここ最近は労働問題に関する相談を多く受けているのですが、やはり使用者より労働者、正社員より非正規雇用者の方々のほうが、より深刻な問題に直面しやすいという状況があるように思います。「平時から弱い立場に置かれている人」ほど、緊急時にはより脆弱性が高まるのではないでしょうか。それによって、被災以前から経済的な問題を抱えていたり社会から孤立してしまっていたりする人と、そうでない人々との格差が、より拡大してしまっていると思います。

また、以前から課題に思っていることのひとつに、「弁護士に相談することのハードルの高さ」というものがあります。これは私たち弁護士側にも多くの問題があるのだと思いますが、「この問題って弁護士に相談すれば解決するんだろうか?」と、多くの人が相談の前に二の足を踏んでしまいます。体調が悪ければ病院に行きますが、「ちょっと困ってるんだよな」という時に、「弁護士のところに行こう」と思う人は多くありません。そのため前述のように、東日本大震災のときは、私たちが仮設住宅など、みなさんの場所にお邪魔させて頂くことで、悩み事の解決方法を一緒に考えていくということを大切にしていました。人との距離を縮めるためには、きちんと顔を合わせて、声を聴いて、ということが大切になってくると思うのですが、現在は感染拡大防止のためにソーシャルディスタンシングが求められているため、同じような方法を取ることができません。これまで行っていた「相談会」のような場も、ほとんど無くなってしまったのが現状です。

困っている方と物理的にお会いして、実際に話をする中で問題解決の端緒を掴むというのがこれまで私たちの行ってきたことですので、非常にもどかしいですね。オンライン相談、電話相談など工夫を凝らしてはいますが、まだまだ悩みを抱えていらっしゃる方の受け皿として、できることをやれていないという思いはあります。

撮影:安田菜津紀

―そのような「距離」を縮めていくには何が必要でしょうか?

まずは自分たち弁護士がどんなことで役立てるのか、皆さんに知っていただく努力が必要だと思います。弁護士が登場する状況といえば、「法に触れてしまったら」とか、「訴訟をおこす」とか、そうした窮まったタイミングを想像する方が多いのではないでしょうか。実際そうした仕事だけをしている弁護士も少なくありませんが、自分自身は、生活の中での困りごとがあったときに、「あの人に相談してみよう…」と思ってもらえる身近な存在でありたいです。

特に災害時は、ただでさえ先々の生活への不安や、錯綜する情報に翻弄されることでの疲労感など、ストレスを感じやすい状況が生まれてしまいます。こうした中で、私たちが寄り添いながらひとつひとつ問題を解決していくお手伝いができれば、その状況も少しは緩和されるかもしれません。まだまだ、役に立てる場所はたくさんあると思っています。

―弁護士にとって「伝える」仕事の可能性とは?

緊急時に限らず、誰ひとりとして同じ生活はないわけですよね。それぞれ違った様々な悩みを一緒に解決していくのが弁護士の仕事ですが、その個別具体性ゆえに、中には支援からこぼれ落ちてしまう事例もあります。そうしたときに私たちは、当事者に近い視点で問題に取り組み、行政や法律のルートで意見をあげていくことはできますが、世論を通じて政治が動かなければ解決されていかないこともたくさんあります。それらを社会に向けて発信し、みんなで深く考えるべきこととして広げていく際、法律家である自分だけでは限界がありますが、別の「伝える」役割を持つ方々と一緒に声を上げていくことで、その輪を大きくすることができると思います。そうした意味でも、Dialogue for Peopleの可能性はとても大きいと思いますし、他の理事の面々とも様々な場面で協力していきたいと考えています。

(聞き手:舩橋和花/佐藤慧)
※インタビューは2019年12月と2020年5月に行いました。

【関連情報】
第二東京弁護士会では、新型コロナウイルスに関連したオンライン相談などの窓口を案内している。


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