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取材レポート

2022.8.9

ガザ地区に降り注ぐロケット弾――繰り返される破壊、苦悩、そして死

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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佐藤 慧 Kei Sato

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田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

田中 えりEri Tanaka

2022.8.9

取材レポート #戦争・紛争 #パレスチナ #佐藤慧

2022年8月5日、イスラエル軍はパレスチナ自治区ガザ地区への空爆を開始。武装組織「イスラム聖戦」への「対テロ作戦」という名目のもと、3日間の空爆により少なくとも44名が命を落としたとされる。7日、エジプトの仲介により両者は停戦に合意したが、緊張は続いている。ガザ地区在住、現地取材パートナーのAysarさんに緊急リポートを寄稿頂いた。

 
攻撃は8月5日の午後に始まりました。金曜日の昼食後、多くの人がうたたねをする時刻に攻撃が始まったのです。私も自宅で昼寝をしていました。爆発の衝撃で目を覚ました私は、「やっぱり始まったか……」と思いました。パレスチナ自治区で活動する組織「イスラム聖戦」の幹部が、今月8月1日に、ヨルダン川西岸地区のジェニンという街でイスラエル軍に身柄を拘束され、両者の緊張が高まっていたのです。

イスラエルはガザ地区で活動を続ける「イスラム聖戦」の武装部門「Al-Quds Brigades」による報復攻撃(イスラエルへの攻撃)を警戒し、ガザ地区への空爆を開始しました。最初の空爆で、少なくとも5歳の少女を含む11人が亡くなりました。3日間に渡る攻撃で、私が確認できただけでも44人が死亡し、360名以上が負傷しました。

破壊の跡に佇むガザの子どもたち。

繰り返される破壊、苦悩、そして死

街はどす黒い悲しみに覆われているようです。子どもたちの中には、昨年の空爆によるトラウマの治療を受けていた子もいます。一連の攻撃は、そうした治療も全て台無しにしてしまったのです。

今回の空爆に先立ち、先週カレム・シャローム検問所が閉鎖され(※)、燃料の供給が途絶えていました。そのため発電所は稼働できず、それまで1日8時間は電気が通っていたところ、現在では4時間しか通電していません。保健省は、病院の医薬品不足も深刻な状況であると伝えています。商店や行政機関なども、空爆の影響により閉めざるをえませんでした。

(※)その後停戦に伴い8日月曜日に検問所は再開通。

私自身は母と弟と暮らしているのですが、最初の空爆のあと、すぐに避難することにしました。なぜなら、昨年5月に空爆があったとき、家に閉じこもってやり過ごそうと思っていたのですが、激しい爆撃の音に四六時中晒されて、生きた心地がしなかったのです。衣服や貴重品、書類などを持ち、即座に祖母の家へと避難することを決意しました。

祖母の家も市内に位置しており、とても安全とは言えません。ガザ地区に「安全な場所」など無いのです。いつ、どこからロケット弾が飛んでくるか誰にもわからないのですから。けれど、祖母の家には多くの親戚が身を寄せており、人に囲まれているという安心感で、自宅で過ごしているよりはいくらかマシでした。

エジプトの仲介により、7日夜に停戦となりましたが、目の前には多くの困難が山積しています。人々は繰り返される破壊、苦悩、そして死に、辟易としています。この14年だけで、5回も戦争があったのですから……。

シャマラフさん一家の話(Aysarさんによるインタビュー)

シャマラフさん一家は、いくつかの部屋に別れて、17人が同じビル内で一緒に暮らしていたといいます。空爆2日目の土曜日、長男の携帯電話に、イスラエル軍から電話がかかってきました(彼らはそうした番号を全て把握しているのです)。「今からそのビルを破壊するから退避せよ」という警告でした。一家は即座に子どもたちを連れて、文字通り“全てを背後に残して”ビルから逃れました。彼らが持ち出せたのは着ていた衣服だけでした。

数分後、ドローンが上空にやってきて「最終通告」を行いました。ビルの入り口に狙いを定め、ロケット弾を放つのです。2014年以降、イスラエル軍はこのようにして「警告」という名の「攻撃」を行ってきました。その攻撃の直後、巨大なロケット弾が2発飛んできて、ビル周辺の建物もろとも粉々に打ち砕いてしまいました。

幸い誰も命を落とすことはありませんでしたが、一家のひとり、医学生であるムハンマドさんは、崩れ落ちたビルを見て身が引き裂かれる思いだと言います。大切な本も、ノートパソコンも、思い出も、全て瓦礫に埋もれてしまいました。家族も別々な避難先で暮らさざるを得ません。今後の見通しはまるで立たず、家を再建できるかどうかもわかりません。

 

粉々に粉砕されたシャマラフさん一家の暮らしていたビル。

繰り返される残虐な行いに、国際世論は声をあげるべきです。イスラエルを支持する国にも、勇気を出して「NO」と言うべきではないでしょうか。

この文章を書いている8月9日は、ナガサキに原爆が落とされた日だと聞きました。全人類にとって、忘れることのできない最悪な記憶のひとつだと思います。原爆に匹敵する恐ろしい経験など存在しないかもしれません。けれど私は、その恐怖を少しは理解しているつもりです。1948年以降、あまりにも多くの人々がここで殺され続けているのですから。

 

「ガザはとても素晴らしい街だ。けれど心から日々を楽しめたことはない。あまりにも酷いことばかりが続くのだから」とAysarさん。

(2022.8.9 / 文・写真 Aysar 翻訳・編集 佐藤慧)

 


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