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馬奈木厳太郎弁護士による性加害について

date2023.3.3

categoryお知らせ

2023年3月3日、演劇や映画界のハラスメント問題にかかわってきた馬奈木厳太郎弁護士により、深刻な性被害を受けた女性が提訴会見を行いました。

提訴したのは、芸能界などでのセクシャルハラスメントの撲滅などを目指す「演劇・映画・芸能界のセクハラ・パワハラをなくす会」代表で舞台俳優の知乃さんで、馬奈木氏は知乃さんが過去に受けたセクハラ被害について代理人弁護士として関わった後、「~なくす会」の顧問弁護士となりました。その後、別件の裁判で知乃さんの訴訟代理人となった頃から、数ヵ月にわたり、体に触れる、卑猥な言葉を吐く、卑猥なメッセージを送るなどの行為を繰り返し行ったといいます。

馬奈木氏は、自身が代理人や顧問弁護士であるという立場や、20年以上も年長者であることを利用し、ときには受任事件への悪影響などを仄めかすなど、精神的苦痛により知乃さんを追い込んでいき、執拗に性的関係を求め、知乃さんの意思に反した性行為に及びました。

訴状ではその経緯が詳細に説明されていますが、馬奈木氏から知乃さんへ宛てたメッセージでは、馬奈木氏が受任弁護士としての立場をもって威圧し、心理的コントロールを行おうとする文面が目立ちます。

また会見に同席した弁護団からは、こうした加害行為は「社会的関係を利用して追い込むエントラップメント型ハラスメント」にあたるという指摘がありました。エントラップメント型ハラスメントは、最も典型的な不同意性交の発生プロセスであり、「逃げ道を物理的に遮断し、突然性的な要求を挟み込み、当事者の弱みに付け込む形で性交を強要」します。上下関係、雇用関係といった権力関係にある場合、そもそも「拒否」を示すことは難しいものですが、「継続する人間関係に荒波を立てたくないという社会規範や、女性は従順さを良しとするジェンダー規範によって、拒否を示しにくくなる」という背景もあるといいます。

知乃さんは「弁護士としての立場を用いた加害行為」について、「馬奈木氏の除名、生涯弁護士として活動しないことなどを求めたい」と述べ、「今回は民事ですが、こうした提訴を行っていくことで性犯罪の厳罰化を求めたい」としています。

馬奈木氏は会見に先立ち「ご報告と謝罪」と題した文章をウェブで公開していますが、その文中では、知乃さんから馬奈木氏の所属弁護士会に提出された懲戒請求書を読み、初めてその行為・関係が知乃さんの望むものではなかったことに気付いたとしています。合わせて、今後一切ハラスメント問題にかかわらないことや、専門家による診断やカウンセリングも受けると述べていますが、馬奈木氏自身、代理人弁護士として関わった21年の訴訟に関係する会見の中で、「深刻な性加害を行った人間が、同じ立場で再登用されることに問題提起を行うことは、当然公共の利害に関わることだと認識しています」と述べています。この言葉に馬奈木氏自身が向き合う必要があるでしょう。

こうした権力・立場を利用したハラスメントは、業界を問わず、社会の様々なところに存在します。情報を発信するメディアとして、そうした構造の問題、日本社会における格差・差別の問題に対して取材・発信を続けていきます。

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