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インタビュー

2020.8.12

あなたの街の平和は、本当の平和ではありません―「平和ではない国」に住む友人からのメッセージ

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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佐藤 慧 Kei Sato

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田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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田中 えり Eri Tanaka

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安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

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佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

田中 えりEri Tanaka

2020.8.12

インタビュー #難民 #戦争・紛争 #平和 #イラク #佐藤慧

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、コロナ禍が世界を呑み込みつつある3月24日、「グローバル停戦」を呼び掛けた(※1)。しかしそうした呼びかけにも関わらず、世界に目を向けると、いまだ多くの地域で武力衝突が続いている。
 
取材でイラクやシリアなど、現在も緊張状態にある国々や地域を訪れると、「日本=平和な国」というイメージを持っている人々が多いことに気づく。「あれだけの敗戦から立ち上がり、経済大国となった日本を尊敬するよ」「二度と戦争をしないという憲法を持っているんだよね」、そんな言葉をかけられることも少なくない。しかしその反対に、自分たちの住む地域は、他の国々の平和のために犠牲となっているのではないかと考える人々もいる。その「他の国々」には、もちろん日本も含まれる。大国同士の対立や資源の奪い合い、政治的な都合などにより日常を破壊される人々は、決して自ら戦禍を望んだわけではない。突如降り注いだ砲弾に肉親を奪われた方々が口にする、「普通の日常を送りたいだけなのに…」という嘆きは、果たして自分とは関係のない他人の言葉なのだろうか。
 
イラク北部クルド自治区から、「コロナ禍でISが息を吹き返している」と連絡を受けたのは今年3月のことだった。ISに対するアメリカの勝利宣言の後、じわじわと力を取り戻してきたISが、世界的緊急事態を機に再び活動を活性化させているというのだ。そんな報告をくれた、現地の取材パートナー、バルザーン・サラム氏に、戦後75年を迎える日本の人々へのメッセージを頂いた。
 

取材パートナーのバルザーン氏(左)。難民キャンプの子どもたちと。(動画からの切り抜き)

世界には、「平和な国々・地域」と「そうではない場所」があります。例えば、私たちの住む地域は、そうではない地域のひとつです。私はイラク北部、クルド自治区というところで生まれ、暮らしています。今も決して平和とは言えない私の故郷は、他の国々(アメリカやヨーロッパ諸国、そして日本など)の平和のために、犠牲となっている地域ではないかと感じています。
 
ここには、ISを始め様々な武装テロ組織が存在します。私たちクルド人は、今もそうしたテロ集団と戦い続けています。ISに参加する兵士の中には、アメリカやヨーロッパ、ロシア、アジア各国からやってきた人々がいます。日本も例外ではありません。私たちは、そうした国々に代わって、ISと戦っているのです。ISとの戦闘による犠牲者は2万人を越えました。 

ISが“建国”を宣言したイラク北部モスルのヌーリーモスク。ISの戦闘員たちが自ら爆破したとみられているが、IS側は有志連合軍が空爆したと主張している。

おそらく、日本で暮らしている人々はこう思っているかもしれません。「日本は平和です。戦闘もなければ、テロ行為もありませんから」と。しかし本当にそうでしょうか。その平和のために、私たちの地域が犠牲となっていると想像することはできないでしょうか。
 
もし平和な国に生きる誰かが、「私たちは平和の内に生きている。二度と戦争など行わない」と言ったとしたら、私はこう返すでしょう。「私たちは、あなたの代わりに戦禍に巻き込まれ、犠牲者を出し、国内避難民や難民を受け入れているのです。あなたの国は難民へと国境を閉ざしますが、そうしている間に私たちは、多くの難民を受け入れ、テロリストたちと戦い続けているのです」と。 

クルド自治区のシリア人難民キャンプは、以前はイラクの国内避難民キャンプとして使われていた。

もし私たちがそうしなければ、戦禍は他の国々へと及んでいたかもしれません。
 
日本に暮らすみなさん。あなたの街の平和は、本当の平和ではありません。それはあなた個人の平和ではあるかもしれませんが、人類全体の平和とは違ったものなのです。
 
私たちが本当に平和を望むのであれば、どこかひとつの国や地域の平和ではなく、他のあらゆる国々・地域の平和のために、協力しなければなりません。
 
国や地域、肌の色や言語など、様々な違いを越えて人類全体の平和を築くためには、私たち全員が、そのために努力しなければならないのです。 

1988年、当時のフセイン政権の化学兵器攻撃により多くの人の命が奪われたハラブジャの街の墓地。国際社会はこうしたクルド人の虐殺から目を背け続けてきた。

(2020.8.12 / メッセージ バルザーン・サラム ・ 写真 安田菜津紀 ・ 翻訳 佐藤慧)

 

(※1)アントニオ・グテーレス国連事務総長の声明

 


 
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2020.8.12

インタビュー #難民 #戦争・紛争 #平和 #イラク #佐藤慧