いえない傷から / D4Pメディア発信者集中講座2022課題作品 髙橋紀渚
date2022.9.27
categoryD4Pメディア発信者集中講座2022
いえない傷から
「物好きだね」
初めて付き合った男の子は、友だちにそう言われたって
わたしは中学生で、モノズキ、の意味がわからなかった
あとで知ったの
とくにかわいくもない人と付き合うなんて変わってるね、だった「美女と野獣カップルはあるけど、その逆はいない説」
テレビ番組が、たしかにそんなことを「検証」していた
立証されたか知らないが、テーマでもう、じゅうぶんでしょう
ひと組だけ、「逆」のカップル
この男の人も、物好き、なんだろうか
それとも、これぞホンモノの愛ですね、ってとこかしら「毛がある人とか無理なんだって」
友だちに聞いた、別の知り合いの女性の好み
むりもないよ だってわたしも四六時中
スベスベな身体にツヤツヤの顔を、おすすめされているもの
電車もYouTubeも、毛がある人とか、無理みたいよ「渋谷ってかわいい子多いよな」「それな」
たったそれだけの会話で、心に薄い膜が張る
だれもわたしのことを言ってはいないのに
守る
心をおんなじゃなかったら
もうすこし写真も好きだったかな
理論武装して、少しは強くなって
もうすぐたぶん、わたしはおとなだ
だからそう、
くらべられない命のうつくしさに
胸いっぱいうっとりする
そういう人になりたいの
わたしはいつからか、写真を撮られるのが苦手です。自分の写った写真を見るのも、苦手です。わたしは可愛くないから、スタイルが良くないから、こんなもの欲しがってはいけない。というか、欲しがることは恥ずかしい。そんなきもちが、いつの間にか心に生まれていたと思います。友人には、かつて何気なく言われた見た目に関する言葉が、いまだに心を縛って、行動を縛って、苦しい、そういう人もいます。定期的に、猛烈に悔しく悲しくなります。かたよった物差しで、人の価値が測られてしまう社会について。
いえない傷から
▶︎形式:詩
▶︎対象:同世代以上の人々
▶︎制作:髙橋紀渚
- こちらは、D4Pメディア発信者集中講座2022の参加者課題作品です。全国各地から参加した若者世代(18~25歳)に講座の締めくくりとして、自身の気になるテーマについて、それを他者に伝える作品を提出していただきました。