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10月27日(水)衆院選の投開票日、JRN報道特別番組「総選挙2024 <ザ・ジャッジ>有権者の審判は」に出演した。

この社会には、投票という形で自身の意思を表明することができない人たちも、共に生きている。だからこそ選挙の度、マイノリティの人々が強いられてきた人権の問題を、「多数決」で決めてしまうことの暴力性についても考える。

選挙特番は他局との兼ね合いもあり、時間が厳密に決められている。限られた時間内ではあるが、質問できたこと、できなかったことをまとめた。

※差別の深刻さを伝えるため、ヘイトスピーチにあたるような文言が掲載されています。

《番組中の質問》

①自民党 森山裕 幹事長(質問:選択的夫婦別姓)

一般社団法人NO YOUTH NO JAPAN代表理事の能條桃子さんが先に選択的夫婦別姓について尋ねてくれた。それに対しての返答は、「党内でも色んな議論があり、国民世論でも色んな考えがある。もうちょっと時間を置いて、党内の議論を深める」という事実上のゼロ回答だった。

私からは、前に進めることができない理由について尋ねたが、「今のままで十分足りるという意見もある」という。しかし、どちらかが強制的に姓を変えなければならないのは、人権の問題という認識はないのか? この「人権問題としての認識」について重ねて尋ねても、「私の立場で申し上げることは控えさせて頂く」と言い、森山さん個人としてはどうかと聞いても「個人のことを申し上げる立場にない」という返答だった。

幹事長としても個人としても答えが返ってこないのであれば、誰に尋ねればいいのだろうか。



②日本共産党 小池晃 書記局長(質問:罰則を伴うヘイトスピーチ規制)

近年では埼玉県内のクルド人をターゲットにした差別が絶えない。小池氏は「差別を促進する入管法の改悪のようなものを元に戻していく」とした上で、「ヘイトスピーチは表現の自由で正当化はできない。罰則は状況を見ながら判断していく」と答えている。

市民が公表した「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト-参議院選挙2022」に、共産党はこう回答していた。

罰則を伴う「人種差別撤廃基本法」:一方、ヘイトスピーチを罰則つきで禁止する立法措置には、憲法21条の言論、表現の自由もふまえた慎重な検討が必要だと考えます。川崎市で制定された、ヘイトスピーチに対する罰則を含む「差別のない人権尊重のまちづくり条例」に、日本共産党は賛成しました。罰則を必要とするほど深刻な実態がある地域では、構成要件を明確化できた場合、条例に賛成します。

「深刻な実態がある地域」とあるが、たった一人の被害であっても、その人にとっては深刻なものだ。刑事罰付きの川崎市の条例でも、ヘイトスピーチの問題は改善が見られるものの、駅前での差別街宣や公共施設への脅迫は続いている。やはり国レベルで法を前に進める必要があるのではないだろうか。



③立憲民主党 野田佳彦 代表(質問:核兵器禁止条約と被爆者、党内での女性の起用)

立憲民主党の公約には、「核兵器禁止条約にオブザーバー参加」とあるが、条約への参加自体について尋ねると、「批准を視野に入れて、まずは3月、締約国会議にオブザーバー参加。(批准は)順を追って対応すべき。核抑止の恩恵を受けている国ではるが、一方で被爆国として核廃絶を目指さなければならない」という。批准する時期の目標についても尋ねたが、「まずはオブザーバー参加から」という答えに留まった。

被爆者と線引きされ、現在も裁判が続いている被爆体験者については、「基本的にはそういう方向(被爆者認定)で考えていかなければならい。差別区別、不公平感がないような対応を丁寧にしていく必要がある」と答えた。

先日行われた党首選では、ぎりぎりのタイミングで吉田はるみさんが立候補できたものの、あわや全員男性の選挙となるところだった。党内のジェンダーバランスについては改善していくとしたが、時間の都合上、番組内では聞けなかったことがあった。

蓮舫さんが都知事選に出馬した際、野田氏は応援演説で、小池百合子候補について、清和会(旧安倍派)とのつながりを指摘する文脈で、「同じ穴のたぬき」等の発言をしている。小池氏はたぬきにたとえられることが多い。それは狡猾さの比喩でもあるが、動物へのたとえは容姿への揶揄としても伝わっていた。こうした言葉の蓄積が、党内でも障壁を作り上げてしまうこともあるのではないだろうか。



④国民民主党 玉木雄一郎 代表(質問:尊厳死)

10月12日に行われた党首討論で、玉木氏は下記のように発言している。

「社会保障の保険料を下げるために、われわれは、高齢者医療、とくに終末期医療の見直しにも踏み込みました。尊厳死の法制化も含めて。こういったことも含めて、医療給付をおさえて、若い人の社会保険料給付をおさえることが、消費を活性化して、次の好循環と賃金上昇を生み出す」

改めて意図を尋ねると、「1分間の中で誤解を生んでしまった。本人、家族、医療やケア関係者も含め、自分の人生の最後のあり方について、自己決定をどう支援していくのかを制度化していくことが必要だと思っている。医療費の削減のために尊厳死の議論をすべきではない」という。

「自己決定」については、国民民主党東京都第24区総支部長の浦川祐輔氏が10月13日、こうX(旧Twitter)に投稿している。

〇歳以上になった人は一律リタイアしてもらう」といういわゆる姥捨山的なものではなくて、「子どもたちに迷惑をかけたくないから死にたい」という方々に選択肢を与える、自己決定権の問題(それこそ“選択的”夫婦別姓とかと同じ)だと思うんだけど、なぜそういう印象操作してしまうのか。

この投稿については「彼は尊厳死と安楽死の概念的区別ができていないので、ツイートは削除させました。国民民主党の考えではない」と玉木氏はいう。

しかし同党の政策パンフレットにも「現役世代・次世代の負担の適正化に向けた社会保障制度の確立」の大項目のなかに「(13)法整備も含めた終末期医療の見直し」があり、そこに「人生会議の制度化を含む尊厳死の法制化によって終末期医療のあり方を見直し、本人や家族が望まない医療を抑制します」と書かれている。この流れからすれば、「医療費削減が目的」と伝わっても致し方ないのではないだろうか。

番組内でライターの武田砂鉄さんも「誤解のしようがない」と評していた。



⑤公明党 山口那津男 常任顧問(質問:入管法、党内のジェンダーバランス)

2023年、入管法改定案が成立し、施行された現在は、3回以上難民申請している人が強制送還の対象になりえる。公明党はこれに賛成していた。しかしそもそも、日本の難民認定数は極めて少ない上、審査の不透明性など、認定のありかた自体にさまざまな問題があることが指摘されてきた。今の体制で、間違った難民の送還が一件もないと断言できるのか?

「そこは個別の事案ごとに慎重に判断していく」というが、10月24日、アフリカ人男性の3度目の難民申請が、東京地裁で認められた。「運用の中身をよく検証しながら議論を尽くす」としか山口氏は答えなかったが、入管の審査からこぼれ落ちた難民が、なんとか司法判断で救済されたのだ。あわや誤った送還で人を命の危険に晒していたかもしれない危機感が、山口氏の語りからは感じられなかった。

今回の選挙の女性候補者の比率(自民16.1%、公明16%、立民22.4%、維新17.7%、共産37.3%、国民21.4%、れいわ34.3%、社民29.4%、参政37.9%)で、公明党は「またもや」最低だった。というのも2019年の参院選、2021年の衆院選、2022年の参院選でも同党の候補者比率は最低であり、その度に私はそれを尋ね、毎回「地方議員に女性はたくさん(約3割)いる」と返答されている。

国会議員の人数にそれが反映されていのは、党内の問題ではないかと問うても、「そんなことはない。国会議員も徐々に増えている。議員の絶対数が大事」と答えるに留まった。

能條さんからは、地方で次世代の議員をどう増やしていくのか問われていたが、「これから大いに検討」「地方議員は地域の人との接触が多く、年配の方と接触するが多いので、経験を積むことも重要な要素」と返答した。しかし地域には、若い世代もともに生きているのではないか。

党内の常任役員に名を連ねている方々もほぼ全員男性であることを尋ねたが、「これから女性が増えていくと思います。常任役員クラスの人で勇退した人が何人かいる」。「10年以内に(女性)3割を目標にしている」という。

このように、「待ったなし」の問題として「前倒し」するのではなく、かなり悠長な目標を立てているのが現状だ。年配の男性の「勇退」を待っているだけでは不十分だろう。



⑥日本維新の会 藤田文武 幹事長(質問:国籍と差別)

日本維新の会の政策集の中には、「二重国籍の可能性のある者が国会議員となっていた事例に鑑み、外国籍を有する者は被選挙権を有しないことを定めるとともに、国政選挙に立候補する者は自らの国籍の得喪履歴の公表を義務づけます」という項目がある。

藤田氏にこの意図を尋ねると、「蓮舫さんのときに話題になり、二重国籍に批判があった。有権者にお示しして判断をあおぐ」のだという。つまり、蓮舫さんの台湾籍は「国籍」と考えているのだろうか? その点について質問すると、「台湾は国と呼んでいいのかは議論があり奥深いもの。議論してブラッシュアップしていきたい」とした。

ちなみに藤田氏は「黒シール事件」を知らなかった。1983年に行われた衆院選で、石原慎太郎氏の対立候補であった新井将敬氏の選挙ポスターに、「北朝鮮より帰化」というシールが貼られ、その後、石原陣営の秘書が関わっていたことが判明している。

こうした事件を考えれば、過去の国籍をわざわざ提示させることが、ヘイトをあおることにはつながらないか? 「その議論はある。そういうことも含めて判断頂く。そういう人を差別はしない」というが、差別は意図の問題ではない。

実はこの公表義務付けの問題については、2021年の衆院選の特番で、当時幹事長だった馬場伸幸氏にも尋ねている。馬場氏は“外交、安全保障上重要な政策決定をする”立場から、「公人として“きちっとした経歴”を明らかにするのは当たり前」だと返答した。

「被差別部落出身であることを書けとは言わないと思いますが、国籍の履歴開示はなぜ必要か」と荻上さんが尋ねると、馬場氏は「同和地域の出身の方は同じ日本人ですから」という。「帰化した人は、それ以外の日本人とは別ということでしょうか?」と荻上さんが続けると、一瞬の間も置かず、「そういうことです」と馬場氏は返答した。



⑦自民党 石破茂 総裁(質問:選択的夫婦別姓、同性婚)

石破氏がつなぐ時間は約3分と非常に限られていたため、荻上さんが同性婚と選択的夫婦別姓に絞って質問した。

選択的夫婦別姓については「党内には根強く反対論がある。自民党特有のというべきか、そういう現象。いつまでも延々とと議論しても仕方がないからオープンに議論したい」としながらも、「党議拘束外したらどうかという方もいるが、党議拘束外すことに値するかどうかに私は納得できていない」「(党内の反対している人たちは)家庭を大事にする考えの人が多い」という言葉が続いた。

「値するか」という発言には、この問題を軽視しているニュアンスを感じた。そして、選択的夫婦別姓を望む人=家庭を大事にしない人、ではない。

同性婚については、「認められないことによって権利が毀損される人のことをどう考えるかだと思いますが、侃侃諤諤、議論をしないと答えは出ない」「総裁がこうだからこうだ、という、我が党はそういう党ではありません」という、他人事のような返答が続いた。

こうして終始、「自分はいいと思うけれど、党内が……」という言い訳が続いた。マジョリティが「議論を深める」と先延ばしにしている間、当事者が不利益を被り続けることを良しとするのだろうか。



⑧日本共産党 田村智子 委員長(質問:党内のハラスメントの指摘)

1月の党大会で、特定の党員の除名を問題視した神奈川県議の女性に対し、「発言者の姿勢に根本的な問題がある」と、田村氏が強い口調で反論する場面があった。その後、県議の女性は、パワーハラスメントを受けたとして、第三者委員会による検証を求める意見書を党中央委員会に送っている。「党内の問題なので、党内でしっかり対応している」というが、これはパワハラにはあたらず、第三者調査も考えていないという。

あくまでも「ルールを守れない党員に、ルールに基づいて対応(除名)した。それに誤った意見が大会で出されれば、何が誤りかを冷静に批判する責任が中央役員にはあった」としている。

私はこの限られた時間の中で、除名の是非については問うていない。ただ、あの党大会では、県議の女性にはその場で反論の機会はなかった上、党内の権力勾配を考えたときに、田村氏には権威性がある。

裏金の問題を鋭く追及した重要な実績がありながらも、共産党は今回、議席を減らしている。党に閉鎖性はないか、党内のガバナンスや透明性の問題をどう解決していくかは今後の課題ではないだろうか。



⑨日本保守党 河村たかし 共同代表(質問:外国人差別)

まず第一に、河村氏は終始、へらへらとした態度で、返答も要領を得ないものだった。

入管難民法の改正と運用の厳正化を掲げていることについて荻上さんに問われると、「やっぱりその、安けりゃ(やっつけりゃ、とも聞こえ不明瞭)入れるという発想はやめにゃいかんわな、とにかく人件費で」「根本的なところで、今の発想いうのはちょっとマズいんじゃないの、ということですわ」という。

「特定技能2号の拡大、家族帯同を許す政府方針を見直す」を掲げていることについては、「国内の雇用を守るいうことは前提でやってかないと、安けりゃ(やっつけりゃ、とも聞こえ不明瞭)入れるいうそういう発想でたくさん入れるのはいかんちゅうの」というので、私からは家族帯同をどのように見直すのか問うた。「そこはまあ、細かいというか。規制については、またちょっと、また国会になってからきちっと、どういうところできちっとやっていくかいうのは、また別個に考えますわ」というが、家族帯同の規制は結局、特定技能で働く人たちを「労働力」としてのみ扱い、「生活者」として見ていないことの表れではないだろうか。また、「安さ」を問題視するならむしろ、外国人労働者が搾取されない環境を整備する必要があるのではないか。

また、「留学生制度の見直し(安全保障の観点から出身国を厳選する)」について、武田さんが「この文字だけ読みますと非常に差別的」と指摘すると「そういうことについては厳格にやらしてもらうと。日本の国を守らしてもらおうと。まあ、そういうことですよ」という。

私からは、特定の国の出身者は安全保障上の問題になり得るのかと尋ねると、「そうとは言えんですけど」と答える。しかし公約には、「安全保障の観点から」と書いてある。改めて問うと「安全保障上の観点は当たり前のことじゃないですか、それは」と答える。もう滅茶苦茶である。

河村氏が市長をしている間にも、市内の入管収容施設では、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなる事件が起きている。そこから「外国人の命と人権を守る」どころか、全く逆の方向に舵を切ろうとしている。他にも「出産育児一時金の引き上げ(国籍条項をつける)」について尋ねたかったが、残念ながら時間が足りなかった。

ちなみに冒頭、河村氏が「ハウアーユー」と問いかけてきたが、荻上さんがそれには乗らず、相手のペースに呑まれなかったのは大切なことだった。



⑩社民党 福島みずほ 党首(質問:オール沖縄)

沖縄2区で社民党の新垣邦男氏の当確が出ていた。沖縄の選挙区を巡っては、れいわ新選組の山本太郎代表が、野党共闘や候補者選びのあり方に疑問を呈し、「オール沖縄の歴史的役割は終えた」「選挙互助会に落ちぶれた」等の発言をしていた。

福島氏にそのオール沖縄について問うと、「中央の自民党の辺野古の新基地建設、沖縄南西諸島の自衛隊配備とミサイル配備に反対するためには力を合わせていかなければならないことがたくさんある。自民党が地位協定すら見直さないことなどに意見を言っていくこと、超党派で国会で力を合わせて行政と交渉することも大事」と返答した。

掲げている公約は皆、今の自民党への「カウンター」になるものだが、今回の選挙では一議席に留まっている。次世代への届け方、党内の次世代の育成などが課題となっているのではないだろうか。



《番組中に質問できなかったこと》

①れいわ新選組 山本太郎 代表

山本氏の体調不良により、投開票日の出演は見送られた。前日、大石あきこさんが投稿した動画がある。山本氏と思われる人物が、たどたどしい日本語で投票先について語るものだった。最初に見たとき、「生成AIで作ったフェイク動画ではないか」と疑ったほどだが、この経緯は明らかになっておらず、大石さんは投稿を削除している。

「元になっているものでは」と言われている動画も見てみたが、タイの若い女性がたどたどしい日本語を話すことを面白おかしく消費するという構図に、私は問題を感じる。そして「パロディである」といえば、日本語話者である山本さんが、こうした真似をしていいことにはならない。

れいわは差別についての政策も数々掲げている。差別は発した側の意図の問題ではないことはよく知っているはずだ。これは政党の支持、不支持の問題ではなく人権の問題だ。しかるべき説明を待ちたい。



②国民民主党 榛葉賀津也 幹事長

榛葉氏とつないだのは私が出演前の時間だったため、直接質問することができなかった。榛葉氏は自身の公式サイトの「中東への想い」で、イスラエルについて「首都エルサレム」と記述している。

外務省のサイトにはイスラエルの「首都エルサレム」について「日本を含め国際社会の大多数には認められていない」と注釈をつけている。

米国でトランプ氏が大統領時、テルアビブからエルサレムに自国の大使館を移し、それに対する抗議活動が広がった。東エルサレムは第三次中東戦争以降、イスラエルに占領されているが、パレスチナ自治政府は、ここを将来的な首都と位置付けている。一方でイスラエルは、東を含むエルサレム全体が首都なのだ、という主張を繰り広げてきた。

榛葉氏は昨年11月14日の参議員外交防衛委員会で、「ハマスは、病院の地下を基地にしたり、病院の施設の横に若しくは施設内にミサイルランチャーの発射台を置いたり、意図的にやっている」とした上で、「重要な軍事施設と認められると、被害があっても攻撃が(国際条約の)違反ではないという解釈でいいか」等、イスラエルの攻撃を正当化するような質問をしている。

ガザでこれだけの虐殺が起きている中でも、イスラエルのナラティブに寄っていくのか、問うていかなければならない。



③参政党 神谷宗幣 代表

今回の特番中に神谷氏につなぐ機会はなかったが、10月24日のTBSラジオ「【衆院選直前スペシャル】9政党の幹部・議員に問う!」で荻上さんたちが質問している。

LGBT理解増進法は「共産主義にもとづく家族を破壊するための政策」など驚愕するような主張を繰り出し、外国人への生活保護反対も掲げた。「日本国籍とそうではない人はちゃんと線引きを」という。「万国そう」「ほとんどの国が(生活保護を)自国民に限っている」と神谷氏は言うが、たとえば日本の生活保護利用者に占める外国人の割合は2021年に3.3%、日本の生活保護にあたる社会保障において、米国での外国人の割合は7.1%、ドイツは37.8%だった。

米国の大統領選のテレビ討論のように、こうした番組でも逐一ファクトチェックを入れなければならないだろうか。

ちなみに「外国人への生活保護は違法」というデマが流布されることがあるが、最高裁判例は「生活保護法の適用を受ける」のは日本人だと示したのみであり、自治体ごとに行政措置として外国人に対しての保護も実施してきた経緯がある。



最後に

「以前はこの時期の選挙に消極的な発言をしていたのに」「選択的夫婦別姓は“やらない理由が分からない”とまで言っていたのに」――自民党、石破氏の「変節」が、総裁選後から批判を受けてきた。しかしこれは、石破氏だけに留まるものではない。

自民党から出馬し、比例で復活当選となった大空幸星氏は3年前、「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」のTシャツを着てテレビ番組に出演した写真を投稿し、「LGBTの方の65%が自死を考えた事があるという調査もある。同性婚は人道問題であるという観点も重要」としていた。ところが選挙前の討論回で、選択的夫婦別姓や同性婚の賛否についてのアンケートに回答しなかったことを問われ、「(質問者に対し)まさに政治家の発想。理想主義より現実主義、イシュー化することによって進まない問題もある」「イシュー化して様々な意見が乱立することによって本来進むべきものも進まない」とした。

森山幹事長の「ゼロ回答」の構図と重なるやりとりではないだろうか。そもそも、その「イシュー」と「現実問題」として向き合わざるをえない人たちがいる中で、「イシュー化する」「しない」を選べることもまた特権ではないのか。

選挙で選ばれた=全権委任された、ではない。そして政治は本来、大きな声をさらに轟かせるためのものではなく、小さくても大切な声を置き去りにしないためのものだと私は思う。どんな立場のどんな人であろうと、「生きていていいんだ」と思える場所を築くものであるように、これからも、国会に送られたそれぞれの言動を注視していきたいと思う。

また、これは個人的な思いになるが、維新の会の「国籍の得喪履歴の公表」について問うことは、私にとっては家族や自分に向けられてきた様々なヘイトスピーチを思い起こさなければならない、苦痛を伴う作業だ。在日コリアンだった私の父も、私が生まれた後、日本国籍を取得している。2021年の馬場氏とのやりとりは忘れられないものだった。あの日は、父の命日だった。「他の日本人とは違う」と線引きされてきた父の歩みを思った。

だからこそ今回、武田砂鉄さんが、日本保守党の政策にはっきりと「非常に差別的」と発言したことは、「マジョリティから問う」という意味でも重要なことだった。こうした輪を、メディアの中でもさらに広げていきたい。



Writerこの記事を書いたのは
Writer
フォトジャーナリスト安田菜津紀Natsuki Yasuda

1987年神奈川県生まれ。認定NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『国籍と遺書、兄への手紙 ルーツを巡る旅の先に』(ヘウレーカ)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

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