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イベント情報

2022.10.6

「伝える」への思いの分かち合いを、これからの原動力に —「D4Pメディア発信者集中講座2022」開催レポート 

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

田中 えりEri Tanaka

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

田中 えり Eri Tanaka

田中 えりEri Tanaka

2022.10.6

イベント情報 #伝える仕事 #メディア

この夏、昨年に引き続き18〜25歳を対象に、「伝える」ことについて考えるイベント「D4P メディア発信者集中講座」を開講しました。3日間にわたる講座、23名の受講生と共に学びを深める時間となりました。その様子を、D4Pインターンで2021年講座受講生の中野ちさとがレポートします。
 

        

メディアとは、取材とはどんなものであるのか

メディアとは何か、メディアリテラシー論とは何か。評論家・荻上チキさんの講義で「メディア発信者集中講座2022」がスタートしました。私たちの日常生活の中にある潜在意識や情報との接触が及ぼす影響について。3日間にわたる講座の軸となる知識を蓄える時間となりました。

荻上さんから受講生へのメッセージでは「リサーチや調査結果に敏感になってほしい」とありました。簡単にインターネットの検索で終わるだけでなく、学術的な論文に目を通して、正しい情報で考えを深めることの意義を忘れずにいたいと思います。

情報量の多さに、受講生からは「まだ解釈しきれていない部分がある」と率直な声もありましたが、受講生のみなさんが講義内容とじっくり向き合っている姿が印象的でした。
 

         

伊藤詩織さんの講義では、映像ジャーナリズムの可能性に触れることができました。

映像のいいところは、音声と視覚で伝えることができること。そして、映像を番組化できなくても、テキストなど、ほかの形でも発信することができることにあるといいます。そして、メディアの役割とは、「普通」を作り上げるのではなく、様々な人のストーリーを伝えること。「遠い場所の誰か」ではなく、「自分ごと」として捉えられるようにすることだとお話がありました。

質疑応答では、編集の段階での葛藤や映像で伝えることの難しさについて、受講生からも多くの質問が上がっていました。
 

            

「取材は『いただきもの』」、弊会フォトジャーナリスト安田菜津紀の講義テーマです。「誰かにシャッターをきることは、ときに暴力的になる」「ジャーナリストの仕事は間接的な仕事」。安田が取材をするときに、どのような意識を持って取材相手の方々と向き合っているのか、そしてその過程で抱く葛藤についてお伝えしました。

取材をしてことばをいただく、写真をいただく。いただいたものに対して、自分は何をできるのかということを常に考えるといいます。報道という言葉は、「報いる道」と書く。言葉や写真をいただいた方々にどう報いることができるのか。

最後に、「自分にできることもだけれど、自分に何ができないかを自覚することも大切だと思う。自分にできないことをやっている人と手を携えられるのかということを考えることが大切になる」と受講生へのメッセージを送りました。
 

           

報道という視点で見る社会問題

弁護士・師岡康子さんと学ぶヘイトスピーチと報道について。講義冒頭では、実際に行われたヘイトスピーチの様子をビデオで視聴しました。思わず目を背けたくなるような衝撃的な場面もありましたが、現実で起きていることの深刻さに気付かされるものでした。

ヘイトスピーチとは、ヘイトクライムとは何か。報道が担う役割とは何か、報道によって差別がより拡散される危険性についてもお話いただきました。

講義終了後にも師岡さんのもとへお話を聞きにいく受講生が何名かいらっしゃいました。対面での開催が実現できた意義を改めて感じた場面でした。
 

 

性暴力と報道のあり方について、講師はこのテーマについて長年取材を続けてこられたライターの小川たまかさん。性暴力の被害者の心理状況や、報道における性暴力の取り上げ方についてお話しいただきました。被害者に自責の念を抱かせないよう、取材時の質問や態度にも十分な配慮が必要だと学びました。

被害者に向けられるバッシングと性に関する内容をタブー視してきた報道。自分にとって身近な人に被害を打ち明けられた時に、どのような言葉をかけることができるのか。受講生からも質問が多く寄せられました。

講義の終わりには、「自分で気づいていなくても、自分が傷ついていることもある。自分の方法で、心を労わることを忘れないでください」とメッセージをいただきました。
 

     

文章、写真、動画、講演で伝える際の技術的なことを含め、全6講義の最終回を務めたのは弊会代表・フォトジャーナリストの佐藤慧。

「何かを伝えるということは、時にはその人を傷つけることになる。でもその感覚を伝えてもいいのではないかと思う」。
東日本大震災から11年が経ってこの社会はどれくらい変わったでしょうか。感情と向き合う機会を繰り返すのは、人間が忘れてしまわないためであるといいます。

「ずっと『悲しい被災者』でいなきゃいけない訳じゃない」。取材される側としての経験から、感じた違和感についても率直に話をさせていただきました。
 

        

それぞれの物語があることを理解してほしい。その悲しみを大切にできているのか。自分が理解できないことに自分が触れた時に想像力を働かせてほしい、と力を込め、講義を締めくくりました。
 

学びだけでなく、感じた「もやもや」も共有することの大切さ

1日目・2日目の講義後には、ファシリテーター・徳田太郎さんの進行のもと、自分の思いを言葉にし、受講生同士で共有する時間をもちました。講義の感想や疑問、受講生ご自身の経験や、今後どうしていきたいのかなどの思いをシェアしました。

       

3日間のプログラムの中でも、みなさんの心の距離がぐっと縮まっているのを会場の空気から感じていました。受講生からも「シェアリングタイムの時間で気づかされることが多かった」「安心して自分の言葉を吐き出せる場だった」という声を多くいただきました。
 

            

3日目は受講生が制作した作品課題の発表を行いました。
制作者から作品に対する思いを聞いたり、ファシリテーターの徳田さん、D4P佐藤、安田からのフィードバックを行いました。他の受講生からの質疑応答や感想を伝える時間もあり、お互いの興味関心をより深め合える時間となりました。
 


 

受講生の提出作品の一部はこちらからご覧いただくことができます。

「D4Pメディア発信者集中講座2022」課題作品
https://d4p.world/activities/seminar/2022summer/

 

また、3日目には昨年の受講生の方々にもお越しいただき、今年度の作品課題への感想やシェアリングタイムにも参加していただきました。昨年の講座は全面オンライン開催だったため、1年越しの再会でありながら、「対面では初めましてですね」と挨拶を交わす姿が微笑ましく、あたたかい場となりました。
 

最後に、D4P・安田から受講生へ修了証をお渡ししました。ここでの出会いや学びが、いつかどこかで「心の杖」になることを願って。

真っ直ぐ「伝える」ことに向き合う、同世代の存在の心強さ 〜受講生と運営者の3日間を振り返って〜

昨年、私は「D4Pメディア発信者集中講座2021」に受講生として参加していました。コロナ禍で大学生活もほとんどがオンライン上での関係。誰かと言葉を交わし、じっくりと考えを共有するという時間がなかなか持てずにいました。

そこでこの講座に参加し、同世代の「伝える」に関心を持つ受講生たちと共に学びました。感染者数の急増に見舞われ、全日程がオンライン開催となりましたが、日々自分の中にあったもやもやが講座の中で言語化されていき、「オンライン上でもこんなにも熱量に溢れる交流をすることができるのか!」と感動したことを鮮明に覚えています。対面開催であれば、より参加メンバーたちと関係を深められたのではないか、とやや悔しさが残りました。それでも、講師の方々のお話や、他の受講生がかけてくれた言葉や実現したいこと。1年経った今でも私の原動力であり、私にとっての財産となっています。

そして今年、私はこの講座に運営側として携わらせていただくことになりました。

定員を大幅に上回るご応募の中から一緒に学ぶメンバーが決まり、今年は全日対面開催を実現することができました。
 

初日は緊張気味だったシェアリングタイムも、回を重ねるごとに熱を帯びていきました

講師陣からの熱量溢れる講義は、昨年だけでは理解しきれなかった部分を改めて理解することができたり、もう一度聞いて新たな発見をすることもでき、今年も学びと発見が多くありました。

受講生のみなさんからは、「参加できてよかった」「この受講生たちと出会えてよかった」「この講座をスタートとして今後頑張りたい」という声を聞くことができて、私は本当に幸せでした。誰かの学びの糧になれたこと、新たに踏み出す一歩に携われた、という達成感と共に、こんなにも真っ直ぐで「伝える」ことに向き合っている同世代がいることが、私自身にとっても大変心強いことです。ご参加いただいた受講生のみなさん、本当にたくさんの学びを共有してくださって、ありがとうございました。

今年は、昨年の受講生たちにもお越しいただき、1年越しの再会を果たせました。こうして来年、再来年、また来年、と繋がりを広げていけたら良いなと思っています。

そして、いつもDialogue for Peopleの活動を応援してくださるみなさま。日々関心を持ち続けてくださる方々がいるからこそ、実現できた講座でした。「D4Pメディア発信者集中講座2022」を通して若者世代が学びを深め、それぞれの道で新たに一歩を踏み出そうとしています。今後も、こうして学びの場を広げていきたいと考えておりますので、引き続き応援いただけましたら幸いです。
 

       

(2022.10.6 / 文 Dialogue for People インターン 中野ちさと ・ 校正 佐藤慧)

 

中野ちさと(なかの・ちさと)
Dialogue for peopleインターン。2018年、安田菜津紀×いとうせいこうさんトークイベントに参加。以後、ジャーナリストと中東地域により一層関心を深める。2021年、「D4Pメディア発信者集中講座2021」に参加。大学のゼミではドキュメンタリー制作を行う。


▼講座情報
「D4Pメディア発信者集中講座2022」
認定NPO法人Dialogue for People主催、社会課題に近い立場で発信を続ける講師や作品制作を通じて「伝える」ことについて考えるゼミナール形式の若者世代(18~25歳)を対象企画。
 

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2022.10.6

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