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2020.7.15

【イベントレポート】「食を通して伝える難民の声」(2020.6.20)

安田 菜津紀 Natsuki Yasuda

安田 菜津紀Natsuki Yasuda

佐藤 慧 Kei Sato

佐藤 慧Kei Sato

2020.7.15

Event #others

世界難民の日である6月20日(土)、難民支援協会(JAR)との共催イベント「食を通して伝える難民の声」をYouTubeLiveにて配信し、470名近く(※YouTubeStudioアナリティクスユニーク視聴者数)の方々にご視聴いただきました。JAR代表理事の石川えりさんと弊会副代表の安田菜津紀による対談や、日本でレストランを営む難民の方々の声を通じて、難民の背景や現状をともに考える時間となりました。


 
 
日本の難民問題

世界では現在、シリアの戦争やミャンマーでの迫害など、各国で相次ぐ政府や権力者からの弾圧・紛争の影響を受け、約8千万もの人々が避難生活を余儀なくされ、難民となっています。

難民発生国の名だけを耳にすると、遠くで起きている出来事のように聞こえてしまいがちですが、「難民の方々は日本にもおり、身近な問題」と石川さんは指摘します。2019年、日本における難民認定数は、10,375人の申請者に対してわずか44名、人道的な配慮で在留を認められた方も37人に留まります。このように、難民として認定を受けるために日本政府に庇護を申請する方が多い一方、実際に認定に至る人は非常に少ないのが実情です。

そもそも難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた」人々のことを意味すると、1951年に国連で定義されています(「難民の地位に関する条約」)。しかし日本では、難民認定の審査をする際、迫害を受けていることを確認するにあたって、難民の方を「疑う」姿勢で行われていること、またそのプロセスが不明瞭であることなど、国内のみならず国際社会からも問題視されています。

今回は、このような困難を乗り越え「難民」として認定され、日本で暮らし、故郷の料理のレストランを営む方々の声をお届けしながら、難民の方々の現状と背景について、参加者の皆さまとともに考える時間を過ごしました。
 
 
難民の方々の声

長谷川留理華さん

ミャンマーの少数民族、ロヒンギャとして生まれた留理華さんは、当時の軍事政権により国籍も与えられず、事実上「無国籍」として生きてきました。なんとか入学を認められた小学校でも、人種の違いによりいじめや差別を受けてきたと言います。2001年に難民として日本に逃れてきましたが、現在は日本国籍を取得しています。小学生になる留理華さんのお子さんは、イスラム教の戒律により、学校で皆と同じ給食を食べられません。そのため留理華さんは、給食の献立と見た目がそっくりなお弁当を作って持たせるのだと言います。難民として日本にやって来た方の中には、同じように食文化の違いによる悩みを抱える方も多いそうです。

「どちらが一方が、ずっとどちらか一方に合わせていくのではなくて、学校の中でお互いの食文化を紹介しあって『美味しいね』という共通点を見出すこともできるのではないでしょうか」(安田)
 
 
タンスエさん・タンタンジャインさん(画像をクリックするとインタビュー動画が再生されます。)

東京・高田馬場にあるミャンマー料理店「スィゥミャンマー」を営むお二人。「『スィゥ』は『仲間』『家族』『友達』という意味です。ミャンマーの人たちと仲良くしてくださいという意味で、このレストランの名前を『スィゥミャンマー』と名付けました」(店主・タンスエさん)
1988年にミャンマーで起きた「8888民主化運動」に参加したことを理由に、当時の軍事政権から命を狙われるようになったというタンスエさん。日本に逃れてから難民として認定されるまで8年かかったといいます。

▶︎ 「スィゥミャンマー」応援ページ
 
 
南雅和さん(画像をクリックするとインタビュー動画が再生されます。)

「最近は、難民に対して日本人は関心が薄れてきた気がします。将来、もし日本人が難民として外へ出て行くことがあった時、『日本の方だから心温かく受け入れましょう』と受けいれてもらえるような、そういう将来のことを考えないといけないですね」

ベトナム料理店「イエローバンブー」を営む南雅和さんは、ベトナム戦争後、体制の変化に伴い市民の自由が奪われる中、迫る身の危険から、窮屈な木造船に乗り14歳で一人故郷を後にしました。長い間日本で暮らしてきたことから、近年の日本人の難民に対する理解や関心が薄れてきていることに危機感を感じているとお話しくださいました。

▶︎ 「イエローバンブー」応援ページ
 
 
参加者と掘り下げる課題

配信中は、このほか、YouTubeLiveのチャット機能を通じて参加者の方々からいただいた質問・コメントに答える、双方向のやりとりも行いました。

新型コロナウイルス感染拡大の状況と難民の方々への影響に関する質問に対しては、医療にアクセスするために高いハードルがある現状について述べました。
「難民の方で仮放免という状態で生活している方は、無保険の状態。無保険の状態で病院に行くと、単なる風邪だったとしても数万円かかってしまうことも。だからそもそも病院へ行くという一歩を踏み出すのも難しいのではないでしょうか」(安田)

また、『難民を受け入れると治安が悪化する』『受け入れる余裕はない』などといった難民受け入れにあたってのネガティブな意見がある現状をどう捉えているか?という質問に対しては、「実際、犯罪件数に関する統計を見てみると、外国籍の方の数値は下がってきている現状があり、その主張は当てはまらないのではないかと思います。データや事例など、きちんと事実を踏まえて話をすることの重要性を改めて考える必要がある」と石川さん。安田からは「”外国人は犯罪率が高い”という、根拠のないイメージで語ってしまうことに注意しなければ」とお話させていただきました。
 
 
私たちに出来ることは?

「難民の方に寄り添って支援をする役割、そしてその現状を広く伝える役割、そうした取り組みを支える役割…私たちは役割分担をすることで、難民の方を支えることができると思います。直接支援に関わることは難しかったとしても、団体への寄付や、今回紹介した難民の方が営むレストランに足を運ぶなど、できることからまず一歩を踏み出していただけたら嬉しいです」と安田。この他にも、難民支援協会で実施している、Meal for Refugeesという取り組みの導入を自分の学校や会社に働きかけてみるなどのアイディアも共有されました。

「難民に対して『無関心ではない』という意思表示が重要ではないでしょうか。難民の方は『自分は日本社会の一員なんだ』と思ってくれています。東日本大震災の時には『自分たちにできることはないか?』と発災後すぐに連絡をくれ、その後、災害ボランティアとして現地で活躍してくれました。私たちは、彼らとともにどんな未来を作っていきたいか考えることが必要だと思います。」(石川)

「『難民を受け入れていく』というと、それ自体が負担と捉えられがちですが、彼らは日本社会の一員として生きていて、いざとなったらお互いに手を取り合うということが出来るんですね」(安田)
 

提供:認定NPO法人難民支援協会

今回のイベントでは、料理という切り口から、難民の背景や今置かれている現状について知り、身近な問題として捉えることで「自分には何が出来るか」考える時間をともに過ごすことができました。また、リアルタイムで皆さまのメッセージやコメントに触れさせて頂き、画面越しながらも、参加された方とのつながりを感じることが出来ました。

多くの方が、様々なかたちで難民について考え、興味や関心を寄せていくことで、難民の方々を取り巻く環境が少しずつでも変化していくことを、心から願っています。
弊会ではそのきっかけを生み出す発信を続けてまいります。

ご視聴頂いた皆さま、誠にありがとうございました。

(文:吉澤果穂 監修:佐藤慧 / 2020年7月15日)

 
※配信にあたっては株式会社LIFE.14のご協力を、また、当日までの広報は学生団体SOARのご協力をいただきました。ありがとうございました。
 

【参考リンク】
▶︎ 「故郷の味は海をこえて」応援ページ

【参考書籍】
今回のイベントのきっかけになった二冊の本をご紹介します。
▶︎ 故郷の味は海をこえて 「難民」として日本に生きる
▶︎ 海を渡った故郷の味

 

当日の動画のダイジェスト版はこちら
(画像をクリックすると動画が再生されます。)

 


前回の配信

【イベントレポート】「取材報告会-D4P Report vol.1-イラク・シリア」(2020.4.12)

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